経済制裁の効果以上に期待される
ウクライナ東部の安定化

 対ロシア制裁をめぐって、アメリカとヨーロッパの間で温度差が存在するのはよく知られた話だが、アメリカ側がヨーロッパの各国の消極性に苛立つ場面も見受けられる。

 安全保障に詳しい民主党のジェームズ・モラン議員は21日に出演したテレビ番組の中で、「ヨーロッパこそが本当の問題だ。対ロシア問題でヨーロッパ側の立ち位置が見えてこない」とコメント。共和党の若手のホープとして注目されるアダム・キンジンガー下院議員は、艦船の建造でロシア海軍と大口の契約を結んだフランス企業を例に挙げ、「フランス経済に影響が出るとしても、こういった契約を破棄することで、ロシアに対して強いメッセージを送ることが可能になる」と米メディアに語っているが、ヨーロッパの反応は冷ややかだ。

 天然資源から兵器まで、ロシアとヨーロッパの経済的な結びつきは強く、経済制裁の強化を求めるアメリカとの温度差は歴然としている。ベルギーのブリュッセルではEUの外相会議が開かれ、対ロシア追加制裁について協議が行われている。しかし、各国の足並みは揃っておらず、新たな経済制裁にどれほどの効果があるのかは不透明なままだ。

 ウクライナ東部の都市ドネツクではウクライナ軍と親ロシア派勢力との衝突が激化しており、地元で教師を務めるウクライナ人男性は、「非常に限定的なものではあるが、町は戦争状態にある。家や商店が次々に破壊され、空港や鉄道駅の周辺は常に親ロシア派による砲撃のターゲットになっている」と語った。

 23日にはマレーシア航空機の墜落現場に展開していた親ロシア派民兵が撤退を開始したとウクライナの国内メディアが報道。武装勢力は再びドネツク市内に集結するのではと見られている。ドネツクをめぐる情勢は依然として混沌としている。

 欧米による新たな対ロシア経済制裁が発動されても、プーチン政権にどのくらいのダメージを与えるのかは未知数だ。しかし、冒頭でザグレバ氏が語ったように、武装勢力がマレーシア航空機をミサイルで撃ち落としたかもしれないという「想定外」の出来事に直面したプーチン大統領が、武装勢力を支援することにメリットを見出さなくなり、彼らへの支援を打ち切る可能性までもが浮上している。

 大変皮肉な話になってしまうが、マレーシア航空機撃墜事件がもたらしたものは、経済制裁によるプーチン政権の弱体化ではなく、ウクライナ東部の地域安定化ではないだろうか。