少子化の逆風に悩む菓子業界で、江崎グリコが新市場の開拓に成功して注目されている。
開拓したのは、おつまみ市場。定番ブランドが強く、新商品で年間10億円売れれば大ヒットの菓子業界で、今期40億円の売り上げ目標を掲げたチーズ系スナックの「チーザ」が、酒の肴として人気を博している。
2008年、一部地域で試験的に発売したところ、売れ過ぎて供給不足となり2週間で販売を中止したほどで、味には定評があった。供給体制を整え09年4月から全国展開。11月までの実績では強気の目標をさらに2割上回る快調な売れ行きで推移している。
グリコがおつまみ市場を狙った契機は03年の規制緩和による酒売り場の拡大。不況による家庭内飲酒の増加も追い風となった。おつまみ市場を研究すると、淘汰の激しい菓子とは異なり、品揃えやパッケージは新鮮味が乏しく、CMなどマーケティングも手薄だった。いわゆる“珍味”が主体で、女性は敬遠しがちと、消費者の満足度が低いことも判明した。これらに商機を見出したのだ。
発売前にグリコが抱いた懸念が価格と商品のマッチング。店頭での実勢価格は190円前後。外観ははがきサイズで内容量38グラムと、菓子としては割高なイメージが否めないからだ。
だが、ジャンルの妙で、小さな燻製でも300円前後の商品が並ぶおつまみコーナーに陳列されると、割安感さえ漂ってくる。こうして当初の不安は杞憂となった。逆に、缶ビールと肴でワンコイン(500円)というニーズにもマッチしたという。
グリコの成功を受け、他社もおつまみ市場参入を検討し始めた。おつまみがバラエティ豊かになることは間違いなく、左党には朗報となりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木 豪)