「自分が望む答え」を含んだ質問で
相手の決断を促せ

 交渉で使える質問の方法を、もう1つ紹介しよう。

「オブジェクション!(異議あり!)」と声を上げる弁護士の姿を、アメリカの映画やテレビドラマで目にしたことがあるだろう。

 この発言は、相手側の弁護士による証人尋問が不適当なときに行うもの。

 自動車事故の目撃者を証人として連れてきて、「運転手は視界が悪いなかでスピードを出しすぎていたように見えましたね?」という質問をした場合、オブジェクションの対象となる。なぜなら、証人が「はい」と答えるのを見越して、証人から聞きたい話をあらかじめ質問のなかに盛り込んでいるからだ。

 本来なら「どれくらいの速さで運転しているように見えましたか?」「運転手の視界はどうでしたか?」などと聞かなくてはいけない。

 ただ、このような「『自分が望む答え』を含んだ質問」も、裁判でなければ許される。とくに、相手に決断を促したいときには最後の一押しになる。

 クライアントが元従業員に裁判を起こされ、和解交渉をしていたときのこと。

 長時間かけて、ようやく元従業員の要求が2万ドルまで下がってきた。クライアントが支払ってもよいと言っていた金額だ。ところが、クライアントはいざ支払うとなると、元従業員への怒りの感情のせいか、最後の決断ができない。

 冷静に考えれば、願ってもない金額。そのまま裁判を続けたら、弁護士費用はすぐに2万ドルを超えてしまう。