これに習い、欧州型の職種限定正社員について、総労働時間の上限を決めつつ、その範囲内で柔軟に労働時間が選べるという制度を導入するということが考えられる。子育て中の社員で、オフィス勤務時間は限られるが、家事・育児の合間の都合の良いときに自宅で自由に勤務時間を設定できる(深夜・休日の賃金割増はなし)ようになれば、使用者の人件費負担増なしに、働き手にメリットのある制度となる。

 ただし、これらの新たな労働時間制度は、あくまで職務範囲が決められ、労働時間と生活時間を自律的に決めることができる働き方が前提で、それは「日本型」ではない、欧米型の働き方が導入されることが前提になる。

見直されるべき日本の
「雇用保証責任」の在り方

「欧米型」の働き方を導入するにあたって、避けて通れないのが、企業の雇用保障責任の在り方の見直しである。日本企業が、「日本型」の正社員の雇用を維持することができるのは、最終的には企業の意志で自由に配置転換をできるからである。例えば、廃止される事業から他の事業への配置転換や、あるいは企画部門から営業への配置転換などが容易にできる。しかし、職務内容が限られる「欧米型」の雇用契約となれば、そうしたことができない。

 欧米では、配置転換で雇用機会が提供できない代わりに、日本とは異なる従業員の生活保障の仕組みが整備されている。一般に欧州では、労働組合や働き手は事業縮小に伴う人員削減を受け入れるが、その際に削減対象を誰にするかには労働組合が関与し、扶養家族のある中高年男性などは実態的には削減の対象になりにくい。労働組合が企業をまたいで産業や職業で横断的に組織化されており、仕事内容も共通化され、能力認定制度も整備されていることで、他の企業に移りやすい環境にあることも見逃せない。

 北欧を中心に、失業保険や失業扶助、公共職業訓練など、失業時の公的保障も充実している。ハード・ソフト両面における保育・介護インフラの整備が進み、男女共働きがしやすくなっている。加えて、高等教育も含めて公的なコスト補助が手厚く、所得変動リスクに強い生活環境が整備されている。

政策相互間のちぐはぐさが生み出す
「賃金限定社員」の増加という矛盾

「日本再興戦略・改訂2014」でも、『職務等を限定した「多様な正社員」の普及・拡大』という項目が盛り込まれている。しかし、これと並行して進められている厚生労働省の有識者会報告書では、限定型の正社員の雇用保障について、これまでの判例を踏まえて解雇には慎重なスタンスでまとめられている。これは、現状すでに存在する、勤務地や職務が限定されるがゆえに、賃金が1~2割低い、いわば「賃金限定社員」を基本形とするものといえる。