また、農地取得に関しては、農地の転用を避けるため、農地法によって農業委員会からの許可が必要となる。農業委員会とは、地域の農業関係の権限をもつ行政機関で、市町村ごとに設置されている。面接などで農業経験、設備、営農計画が厳しく問われるため、参入障壁は決して低くない。

 農機具を購入するにも、何百万~何千万円単位の資金が必要なため、自治体が無利子融資を促しても、返済のメドが立たずに躊躇する者も少なくないのだ。

 そもそも、農水省内部では「ニートやフリーターも含む失業者たちが、厳しい農業を続けられるのか?」という疑問の声が上がっている。地方の就農支援者からも、「工場で組み立て作業をするのと農業は違う。田舎での人づきあいを苦痛に感じ、精神的に続かない若者もいる」(関係者)という声が多いため、取り組みは一筋縄では行かないだろう。

 しかし、それでも就農の機会を増やさなければ、農業人口は増えない。これまでもニートやフリーター状態から脱して、「都会での無機質な生活よりも田舎で農業をしたほうが人間的な生活ができる」と言う若者も少なくなかったのだ。食の安全に関心が高まるなか、国内農業が見直されている今こそが、就農者を増やすチャンスかもしれない。

人材派遣会社も就農支援に参入
「農業立国」への契機となるか?

 政府の「08年度第2次農林水産関係補正予算」では、総額1463億円が投じられた。そのうち「農業の将来を担う経営の育成と雇用創出等」に671億円の予算がつき、新規就農支援の体制強化が期待されている。

 たとえば、農業が閑散期となる冬場に就農希望者を募り、春からの本格稼動に向けて準備を進める。それまでの数ヵ月間は、失業給付や補助金を受けながら農業体験を実施するのも支援策の1つだろう。新規就農者を拡大するためには、農業の指導者となる受け入れ農家の拡充も急務となるから、自治体の取り組みに対して国が支援する余地はいくらでもありそうだ。

 自治体ばかりでなく、就農支援を行なう民間企業もある。人材派遣大手のパソナグループは、「フリーターを農業へ」を唱えて03年から農業インターン事業を開始。これまでにのべ120人の若者が半年間にわたる研修に参加した。2年目の04年は700人の応募があり、面接を経て13人が参加した。04年以降のインターン生の7割が、その後農業関連に進路を決めたという。

 秋田県大潟村では、このようなインターン生の住居確保に協力し、村営住宅を提供。同事業は、青森県、和歌山県、兵庫県に広がりを見せている。パソナグループによれば、「農業インターンについての問い合わせは、ほぼ全都道府県から来ている」という。

 07年からは、これまでのような農業適性を見る事業と並行して、農業の起業家を育てる「パソナチャレンジファーム」も手がけ始めた。

 このように、失業者の雇用創出策として農業支援策までもが浮上する現状は、「時勢の厳しさ」を如実に物語っている。だがその一方、未曾有の大失業時代は、機械的な単純作業に疲弊した非正規社員や、出世競争に嫌気が指したエリート正社員らにとって、心機一転、大地で作物を創造する喜びを知るきっかけになるかもしれない。

(労働経済ジャーナリスト 小林美希)