エボラ出血熱の感染が広がる中、富士フイルムホールディングスの薬「ファビピラビル」が治療薬として期待されている。同薬が、“救世主”となる可能性も出てきた。

 西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るっている。世界保健機関(WHO)の発表によれば、感染者は疑いのある人も含めて1848人。死者は1013人に達しており(8月11日時点)、過去最大の流行となっている。

 また、リベリアで感染したスペイン人が帰国した後、死亡。シエラレオネでは、中国人医師7人と看護師1人が感染し隔離された。外国人にも感染が広がっている。

 大手商社の豊田通商では、感染者が確認された4カ国のうち、ギニア、シエラレオネ、リベリアへの出張を自粛している。国際協力機構(JICA)も現地に派遣している日本人を国外に退避させる。

 エボラ出血熱は、ウイルス性の感染症で、血液や体液に触れることで感染し、発症すると発熱や頭痛、筋肉痛などを伴い出血する。

 くしゃみや咳などの飛沫で感染するSARS(新型肺炎)やインフルエンザに比べて感染力は弱いとされるが、致死率は高い。かつて中央アフリカや西アフリカで発生した際には、致死率は最大で90%近くに達したこともある。

 しかし、常に患者がいる病気ではない。実際の患者に投与して薬の有効性や安全性を確認する「臨床試験(治験)ができないため、エボラ出血熱の予防ワクチンや治療薬の開発に乗り出す製薬会社はほとんどない」(製薬業界関係者)。ひとたび発症すれば、隔離して熱を下げるなど対症療法しかないのが実情だ。