実際にヒトのエボラ出血熱に効くかどうかは、治験の結果次第である。しかし、富士フイルムHDにとって、ファビピラビルのポテンシャルがあらためて認識されたことは朗報だろう。

 実は、ファビピラビルは今年3月に日本でインフルエンザの治療薬として厚生労働省から製造販売を承認されたものの、異例の“条件付き”。対象疾患は、新型または長らく発生していなかった再興型のインフルエンザに限られた。動物による安全性試験で胎児に奇形が生じるリスクがあったからだ。

 現状では、別途、治験をするなどして、有効性や安全性が確認されない限り、通常の季節性インフルエンザの治療には使えない。

 しかも、パンデミック(爆発感染)が発生したときなどに厚生労働大臣の要請を受けなければ製造できない。このため、製造販売を承認されながら、薬価も付いておらず、一般の処方薬としては流通していない。原料を確保して製造命令に備えつつ、売り上げが立たない“待機薬”なのである。

 もちろん、エボラ出血熱に効くことが分かったとしても、それだけでは業績に大きなインパクトはない。商業的には、日米で季節性インフルエンザ薬として、有効性や安全性が確認され、承認されることが重要であろう。

 しかし、エボラ出血熱以外にも、さまざまな感染症向けの薬として開発が加速されれば、社会貢献やバイオテロ対策向けの備蓄など、用途に広がりを持つ薬に育つ可能性も出てきた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 佐藤寛久)