最期まで暮らし続けるために必要な「住まい」が不足しているのを承知しながら、切り捨ててしまった。小規模多機能を在宅サービスの柱と位置付けたのはいいが、多大な需要に応える方策を採らなかった。不可解としか言いようがない。

 そのために、特養入所の待機者数が増大したり、「お泊りデイサービス」がじわじわと広がり出すなど制度内で解決できない新事態の出現を招いた。「お泊りデイサービス」については重大事なので今後の連載で触れていきたい。

 それでも、こうした一連の認知症ケアを目的にした在宅サービスが登場し、宅老所に近い「寄り添うケア」を実現させた意義は大きい。入居者と一緒に調理したり、買い物に出向くなど「食」に拘りながらの素晴らしいケアは北欧諸国にも見られない。こうした前向きな「生活モデル」の認知症ケアがある一方で、従来の「病院モデル」を抱えた前時代的な病院でのケアがまだ残っている。

なぜ日本では精神科病院に
多くの認知症高齢者が入院しているのか

 それは精神科病院に入院している認知症高齢者がなんと5万3000人もいることだ。欧米諸国では見られない膨大な人数だ。その事実を2003年1月29日に東京で開かれた国際会議で各国から突き付けられた。

「認知症国家戦略に関する国際政策シンポジウム」である。英、仏、オランダ、デンマーク、豪州の5ヵ国から招かれた認知症の政策担当者や支援団体の代表が、この数年の認知症施策の実態を誇らしげに報告した。

 フランス代表が「アルツハイマー病患者のほとんどは在宅で暮らしています。精神科病院にいるアルツハイマー患者は1000人未満です。といっても、入院期間はわずか2ヵ月程度と短い」と述べ、豪州代表も「精神科病院に入院する人は非常に少なくなってきた」と発言した。

 シンポジウムで各国が強調した認知症ケアの基本は「脱病院」と「脱抗精神病薬」。「認知症は精神疾患ではない。(BPSDなどの)暴力行為はケアが不適切だから起こること。精神科病院での長期入院は止めることにした」と口をそろえた。数字を挙げて、その成果に胸を張った。

 一方、ホスト国の日本の原勝則・厚労省老健局長は、「精神科病院で治療を終えても退院できない人が多い」と触れただけ。精神科病院にいる認知症者は年々増えており、欧米諸国とは雲泥の差である。

 なぜ、日本だけが精神科病院に多くの認知症高齢者が入院しているのか。認知症ケアの最も遅れたところを底上げする方策はないのか。引き続き次回も、認知症をテーマにして、この問題を掘り下げていきたい。