もうひとつの巨大な収益の仕組み、
「広告モデル」は米CBSがつくった
ビジネスモデル論にはさまざまなフレームワークが提唱されていますが、『ビジネスモデル全史』では、第83講「ビジネスモデル」はイノベーションの源か?で紹介した、4レイヤー(三谷作)を使っています。
その中でも一般に「ビジネスモデル」といったとき、もっとも注目されるのが、プロフィット(収益の仕組み)、いわゆる「収益モデル」でしょう。
先回の、第94講 ジレットの“替え刃モデル”は、ただのアイデア一発ではない、では、その収益モデルのひとつ「替え刃モデル」がキング・ジレット(1855~1932)によってどう創造されたかを、紹介しました。プリンターにせよ携帯電話にせよネスプレッソ(*1)にせよ、「替え刃モデル」は、未だにバリバリの現役でした。
今回は、現代に続くもうひとつの巨大収益モデルである「広告モデル」の創造物語を紹介しましょう。創造者はウィリアム・ペイリー。タバコ会社の御曹司が、米CBSをつくり上げ、広告モデルを確立したのです。
タバコ会社の御曹司ペイリー、
ラジオ会社経営にのめり込む
20世紀の初頭、アメリカには「豊かな大衆」が生まれつつありました。車を持ち、郊外の一戸建てに住み、生活と消費を楽しむ人々の出現です。「替え刃モデル」に続き、この時代に起きたもうひとつの「収益の仕組み」の革新が、広告モデルの誕生です。
CMなどのメディア広告には商品売上増の力があり、メディア(テレビ・ラジオ放送局)はその広告料だけで十分やっていける、と証明したのが、タバコ会社の若き幹部 ウイリアム・ペイリー(William S. Paley、1901~1990)でした。
消費者は1円も払うことなく、かつ商品を買う義務も負わず、自由にメディアコンテンツを楽しむことができる。そんな夢のような仕組みが、この世に出現したのです。
*1 ネスレのビジネス。年間の売上高は4000億円に達する。