行政機能がマヒし、金融機関の臨時休業や、学校の休校も続いている事態に対しては、香港市民からも批判が出てきている。デモへの参加者は数万人に拡大しているが、市民の大半は中国政府との決定的対立に賛成ではない。中国政府が民主派と対話を始めたとしても、それほど大きく譲歩する可能性はほとんどないといえる。

 だが、今回の香港民主化デモが無意味なものとなるかといえば、筆者はそうは思わない。必ず、中国の将来に重大な意義を持つものになると考える。

日本を除く諸外国では「大学生」は
政府の意思決定で無視できない厄介な存在

 このデモ活動が始まる直前、筆者と「上久保ゼミ」の学生たちは、今回の香港民主化デモを主導した香港中文大学(HP)を訪れていた。昨年から始めている、ゼミ生が中文大の授業に参加して議論をして実力を試す「道場破り」だった。

 ゼミ生は、香港中文大の学生から「デモに参加してみないか?」と誘われていた。残念ながら、新学期が始まるため、ゼミ生は日本に帰国せねばならず、デモに参加できなかった。政治に関心が薄いといわれ、政府に反発するデモなどとてもイメージできない日本の学生にとって、これからデモに参加する香港の若者と接したこと自体が、いい刺激であり、いい経験となることを願いたい。

 日本では、政府の政策が高齢者と現職の生活を手厚く守っている一方で、若者に犠牲を強いている(第34回を参照のこと)。政府の「若者いじめ」は徹底しているといえるのだが、若者が政府に対して意見表明をすることはない。政府は余裕を持って、若者を無視して、高齢者向けの政策を推進し続けている。

 そんな日本からは非常にイメージしがたいが、政治学的にいえば、日本を除く世界の多くの国では、政策過程において「大学生」が重要な「アクター」の1つである。「大学生」は政府に意思決定に強い影響力を持つ存在なのだ。

 例えば、英国では2012年度に大学の学費が従来の3倍に値上げされた。その時、英国中の大学で、次々と「学費値上げ反対」の激しいデモが起こった。英国以外でも、大学生は「民族問題」「マイノリティの人権」「反核」「軍縮」「環境問題」など、さまざまな社会問題に対して、デモなどの方法で常に意見を表明している。