4~6月のGDP改定値が年率換算7.1%減。それに9月の日銀短観が追い打ちをかけ、日本経済の先行きが一気に不透明感を増した。

 さらに、鉱工業生産や家計調査など7~9月の数字も五月雨式に発表され、内閣府も7~9月期の個人消費がかなり落ち込むとの試算を公表した。

 円安マイナス効果、実質賃金の低下、消費税増税の三重苦に見舞われている国民生活は堪忍袋の緒が切れつつあるのだろう。再増税反対の声は世論調査にはっきりと出てきた。賛成と反対はおおむね3対7と言ってもよいだろう。

 しかも、今まで再増税を容認してきたメディアまで微妙に論調を変え、反対に舵を切りつつあるように見える。

 経済がこけたら全てがこける。そんな宿命を持つ安倍晋三政権は大きな岐路に立っている。

 おそらく再増税の決断に「ニュートラル」と公言してきた安倍首相も、急速に見送りの方向に傾いてきたに違いない。

 政治的に見れば、再増税にはマイナス要素しかなく、見送りにはプラス要素が多い。ひょっとすると首相はもう決断しつつあるのかもしれない。

 そもそも安倍首相の「成長と改革」の旗印は、第一次政権では強調されたが、第二次ではトーンは落ちたもののそれを捨てたわけではないだろう。もともと首相は明確に“成長派”の人である。財政より経済を優先する人だ。

 ニワトリ(経済)に無理やり卵(税金)を産ませて、ニワトリを重態にさせては何の意味もない。

 財政健全化のための3つの政策手段は、①成長による税収増、②税の無駄使いの排除、③増税である。首相の優先順位もこの順のはずだ。③の増税を最優先させるのは、財務大臣を経験した首相に限られてきた。財務大臣経験のない安倍首相は自由に経済状況を優先させることができる。