新しい組長が権力維持のためにやった経済活動とは?
絶対王政とは、国王に無制限かつ無制約の権力が集中する政体だ。今までは、王とは名ばかりのone of them(数ある封建領主の中の、その他大勢の一人)だった王様は、十字軍遠征の失敗を機に扱われ方が変わった。遠征失敗で疲弊した領主たちから、頭を下げられたのだ。
「今の俺らの経済力では領地を維持できやせん。王に進呈して、これからは王に忠誠を尽くしやす。代わりと言っちゃ何ですが、俺らを守っちゃくれやせんか? 今までの失礼の数々、許してつかあさい!」
ここから王による中央集権化が徐々に進み、16世紀あたりに、ついに絶対王政は完成した。イギリスではテューダー朝のヘンリー7世に始まり、エリザベス1世の頃に最盛期を迎え、フランスではブルボン朝を創始したアンリ4世に始まってルイ14世の頃に最盛期を迎えた。
王は感無量だ。やっと本来いるべき頂点に君臨できたんだから。しかも、今まで目の上のタンコブだった若頭の領主は、領地を差し出して自分に忠誠を誓い、組長だったローマ教皇は、面目丸つぶれですっかりシュンとなっている。オヤジ、えろう小そうなりましたなぁ。ウ、ウハハハハハ。
さあこの絶対王政、もし僕が国王なら、迷うことなく封建制をもっと強化させ、国内の年貢を、すべて国王に集まる仕組みにする。だってそれをやれる立場にきたんだよ。やらなきゃ損じゃん。
でも現実の歴史は、そうはならなかった。正確には、王は封建領主にはなったが、そっちばかりを強化する方針は採らなかった。なぜか? それは、この絶対王政、実は想像以上にコストがかかるからだ。
絶対王政の王権は強大で、その地位はあまりにも甘美だ。だからこそ、多くの人がその座を狙い、王は常にシビアな権力闘争の場に立たされる。
では、その王権を支えるものとは何か? それは、官僚制と常備軍だ。絶対王政を思想的に支えたものは王権神授説(王の権力は神から授かったものとする説)だけど、そんな神の威光なんか、効かないやつには効かない。もうガンガンくる。
だから王は、自らを守る具体的な力を持つ必要に迫られる。それが、優秀なスタッフと強固な腕力、つまり官僚制であり常備軍だ。誰もが一目置くぐらいの頭の切れる頭脳集団と、みんなが震え上がるぐらい恐れを知らない兵隊どもだ。
確かにそのくらい置いとかないと、新しい組長も枕を高くして眠れない。しかも戦力としてだけじゃなく、威圧的な抑止力としてハッタリも効いてなきゃならない。さらに敵はいつ攻めてくるかわからないから、単なる張子の虎じゃなく、常にベストの状態をキープしとかなきゃならない。
こりゃカネかかるぞ。農民からチマチマ年貢を吸い上げるだけではとても足りないぞ~。そこで、そのコスト捻出のため、ある方法が考えられた。そのやり方が「重商主義」だ。王の威光を最大限利用したこのやり方なら、ガッポリ稼げて権力を維持できる。そして、ここから封建制は崩れ、商品経済が発展する土壌へとつながっていくのだ。