「他者性」の弱い子どもの
典型的な3パターン

 たとえば、授業に必要な「テキスト」を忘れてしまったときに、「他者性」の弱い子どもは、次の3つのパターンのいずれかに当てはまることが多いです。

【1】コピーをすぐにもらえると思っている
 テキストを忘れたことに対する罪悪感が乏しく、「テキストを忘れちゃったので、コピーください!」と、シレッと言ってしまう

【2】「何をしてほしいのか」を、何も言わない
 相手(先生)からの指示を待つだけで、自分からは「こうしたい」という要求がない。先生に「隣の人に見せてもらいなさい」「コピーを取ってきなさい」と言ってもらえるまで、モジモジして、何も言わない

【3】「謝る」という選択肢がない
 隣の人にテキストを見せてもらったり、コピーを取ってもらうためには、「忘れてしまって、ごめんなさい」「すみませんが、見せてください」「コピーを取ってくれて、ありがとうございます」といった謝罪やお礼の言葉を口に出すべきです。
 ところが、「何かをしてもらうときは、相手にひと言、謝罪やお礼を言う」という意識が薄く、そのひと言を言うことができない

「他者性」の弱い子どもは、「自分の中に、自分しかいない(相手がいない)」ため、「相手の主張を正しく理解」したり、「相手がわかるように伝える」ことが苦手です

 たとえば、読解問題は「筆者(=相手)が、何を言いたいのか」「この物語の主人公は、どういう気持ちなのか」を読み取る作業です。記述の答案を作成するときも、「この説明で、相手に正しく伝わるか」を考えながら書かなければなりません。

 ですが、「他者性」の弱い子ども、相手よりも自分優先の子どもは、相手の思いを汲み取ることよりも、「自分はこう思う」と、自分に引き寄せて考えてしまいます。

 答えを書くときも、主語や目的語といった「必要な情報」を省いてしまうため、相手に意味が通じにくくなることが多いのです。

 中学受験の直前に、「遊びの中で学んだことを、自分の体験を交えて書きなさい」という作文演習をやらせたことがあります。このとき、次のような作文を書いた子どもがいました。

「ゲームセンターでUFOキャッチャーをしているときに、あとちょっとで取れそうだったので、みんなで台を叩きまくった」

……この作文を書いた子どもは、「これを読んだ先生がどう思うか」を、まったく考えていません。「相手が何を求めているのか」を想像することができれば、「みんなで台を叩きまくった」ことが事実であったとしても、あえて書くことはなかったでしょう。