筆者は、NHKで科学報道にたずさわる制作者たちの数名に、個人的に面識がある。仕事ぶりにも作品にも自然に敬意が抱かれるような人々だ。また貧困問題についても、NHKの組織力と体力を良い意味で活かし、知られるべき事実を知らしめる作品を制作している人々がいることを知っている。しかしこの報道には怒りを禁じ得ない。

 まず、財政審の意向としつつも、「低所得者の家賃より2割ほど水準が高い」という試算を紹介している。この試算は、低所得者の家賃実勢平均と生活保護の住宅扶助上限額を比較したものである。平均と上限を比較すれば上限が高くなるのは当然であろう。この試算をそのまま基準部会資料に転載した厚労省の事務局は、基準部会の委員からも「ミスリード」と指摘されている。

 ついで、調査結果として「全体の30%余りの世帯は上限額とほぼ同じ額の家賃を支払っている」と紹介している。あたかも「低所得層一般よりも、生活保護の方が、より良い住まいに住めるんですよ(不公平だと思いませんか、皆さん?)」と言わんばかりである。

「中には、家賃が割高なバリアフリーの住宅などに暮らす障害者や高齢者のケースや、住宅扶助が支給される受給者に対して上限額いっぱいまで不当に高い家賃を請求しているとみられるケースもあったということです」

 については、「車椅子や介護ベッドを必要とする人々の問題と貧困ビジネスの問題を、同列に扱うなんて、無神経な!」と怒鳴りたい。生活保護を必要とする人々には、障害や加齢によって若年健常者とは異なるニーズを持つ人々も多く含まれている。しかし、通常の民間賃貸アパートはそのようなニーズを想定していない。車椅子を必要とする人が、動線を確保できる広さやエレベーターのある住居に住もうとすれば、家賃が割高になるのは当然ではないか。それは貧困ビジネスと同列に論じられてよい問題ではない。

 また、「生活保護だから」という理由で家賃が上限額まで吊り上げられているとしても、背景は必ずしも「貧困ビジネス」的意図とは限らない。生活保護利用者は入居できる賃貸アパートを見つけにくく、通常の家賃に上積みすることでやっと入居が承諾されていることも多い。また、高齢・傷病・障害による多様なリスクに備えるために、家賃を高く設定せざるを得ない場合もある。見守り・ちょっとした介助など、本来ならば介護サービスとして提供されるべきものを家主が提供しており、その実費分程度の若干の家賃の上積みが行われている場合もある。

 検討するならば、そのような問題の1つひとつ、住宅扶助の金額ではなく、多様な人々がさまざまな理由で生活保護を必要とする場合に生じるニーズと、それらのニーズに民営賃貸アパートのシステムで対応するにあたって何が必要なのかではないだろうか?

 引用した報道の最後の

「部会は今後議論を進め、年内に住宅扶助を見直すかどうか結論を出すことにしています」

 に対しては、

「基準部会の先生方、こんなふうに報道にリードされたまま結論を出さないでください!」

 と大声を出したい。

 では、約5ヵ月ぶりの基準部会では、どのようなデータが提示され、どのような議論が行われたのだろうか?