「そこまで踏み込むのか」。証券業界の関係者らが息をのむ動きが業界の雄、野村證券で起きている。

人事体系の大幅見直しを検討している野村證券
Photo by Takeshi Kojima

 野村は来春をめどに、国内営業部門の要である職種「ファイナンシャルアドバイザー」(FA)の人事体系を大幅に変更する方針を掲げた。今年9月下旬から労働組合と労使協議を進めていることが、本誌の取材で分かった。

 そもそも、このFAとは野村の国内約150支店に配置されている転勤のない営業職のことであり、全国に約2000人いる。

 FAは、商品提案や資産運用に関するコンサルティング営業を行っており、各地域の企業退職者や医師などの顧客を抱えている。

 特徴はその実績連動型の報酬体系にある。ざっと収益の約2割の手数料が入るとあって、実力次第では他の営業職より多く稼ぐことができる。「全国に3~4%しかいない上級FAとなれば、月収200万円以上で支店長らをしのぐ」(野村関係者)といわれるほどだ。

 一方で、退職金もなく、給料の最低保証金額が出る期間も5年間しかない。そのため腕が悪ければ「食べていけない」というリスクも背負っている。

 つまりFAとは、正社員ながら実力主義の営業職種であり、「営業の野村」の“要”を押さえてきた存在だ。1998年に業界で初めてFA職を生んだ野村が今回、見直しに着手したのは、大きな転換点ともいえることなのだ。