権力者も、「下」に慕われる人を
引き上げる
権力者も、味方の多い人を引き上げようとします。
これは、ある中堅企業の社長に聞いた話です。
その会社では、部長以上の人事は社長決裁となっています。人事部がまとめた人事案をもとに、社長が昇任昇格者を最終決定するわけです。もちろん、それまでの業績や役員からの評価など多様な観点から検討を進めます。そのうえで、昇進候補者を絞り込んだうえで必ずやることがあるそうです。
その社長は、普段からおひとりで社内を歩き回って、気軽に若い従業員に声をかける習慣をお持ちです。現場の人々が元気に働いているかどうか、自分の目で確認するためです。その雑談のなかで、昇進候補者の名前をさりげなく口にするのです。「この課長のことどう思う?」などと聞くわけではありません。あくまでも、会話の自然な流れのなかでそっと名前を紛れ込ませるのです。
そして、相手の反応を観察します。
名前を耳にしたときの一瞬の表情の変化、声の変化に目をこらすのだそうです。ある人は、名前を耳にしただけでかすかに表情を輝かせる。ある人は、わずかに顔を曇らせる。こうした、無意識的な反応は「ウソ」をつきません。
正社員に限らず、派遣社員からパート、アルバイトまで相当数の反応を見れば、その課長が「下」からどのように評価されているかが見えてくると言います。そして、それ以外の評価が同じであれば、「下」から多くの支持を集めている課長を部長に昇格させるのだそうです。
その社長は、こうおっしゃいます。
「職場のよしあしは、部門長のよしあしにかかってますからね。少々仕事ができても、下の人から慕われてない人は、たいしたことはできません。職場の雰囲気が悪くなると、あとがたいへんですしね」