社内政治は栄枯盛衰――。後ろ盾になってくれている有力者もいつかは退職します。あるいは、突然亡くなるかもしれません。そのとき、あなたの政治的立場は一気に崩壊し、「悲惨な立場」に立たされるかもしれません。そんな状況を生まないために、課長時代にしかできないことがあるのです。

最悪の処世術とは何か?

 権力者の信頼をいかに勝ち取るか──。
 これが、社内政治においてもっとも重要なポイントです。

 いくら実務能力に優れていても、権力者の不信を買っている人物が重用されることは期待でません。権力者は常に、自分が信頼できる者を用いて仕事を進めようとするからです。身も蓋ものない話ですが、これが現実です。ですから、権力者とのパイプをつくる努力はひそかに進めるのが賢明です。ただし、注意が必要です。そこには大きな落とし穴があります。

 あなたの会社にもいるのではないでしょうか?
 有力な人物にすり寄って、自分の立場を守ろうとする人物が。なかには、有力者の虎の威を借りて、若い人たちに高圧的に接するような人もいます。あまり仕事ができず、臆病な人物がすがりがちな処世術かもしれません。しかし、これは処世術としては最悪の選択です。

社内政治は栄枯盛衰です。

 頼りにしている有力者もいつかは退職する日を迎えますし、高齢の役員であれば突然亡くなるかもしれません。あるいは、その有力者が政争に敗れ、失脚することだってありえます。もちろん、定年を迎えるまで、すがっている有力者の威光が衰えないこともあるかもしれませんが、それはむしろ稀なことです。特定の有力者にすがるのは、ヘタな博打を打つようなものなのです。

 有力者の後ろ盾を失ったとき、彼らの多くは悲惨な立場に立たされます
 新しく台頭した有力者に疎んじられたときはもちろんのこと、新たな権力者にすり寄ることに成功したとしても、その序列のなかでは低位に甘んじざるをえません。むしろ、寝返ったことで、その存在はより一層軽んじられることになるでしょう。

 上層部との関係で苦しい立場に立つだけではありません。
 より深刻なのは、若い人との関係です。それまでは、後ろ盾となっていた有力者を恐れて、彼に従順なふりをしていた若い人たちが反発をあらわにし始めます

 日常的な仕事ですら、進めづらい状況が生れるかもしれません。その結果、上層部は、職場をうまくまとめられない彼に対する評価を下げることになります。こうして、職場で孤立を深める結末を迎えるのです。その時になって、若い人を蔑にしてきたことを後悔してももう遅いのです。

 ですから、権力者とのルートを築く前に、自分より立場が「下」の人々の支持を得ておくことがきわめて重要です。組織の「民意」を得ておくのです。

「課長」というポジションは、この「民意」に直接触れることができる最後のチャンスであることが重要です。部長以上になると、一般社員と触れ合う機会は極端に減ってきます。それ以降は、それまでに獲得した「民意」をベースに、上層部での政治を戦うほかないのです。ですから、課長時代にできるだけ「民意」を集められるように、意識的に行動しなければなりません。