組織の「民意」を得るベストな方法とは?

 まず、「下」に目を向ける──。
 このときに注意すべきなのは、「下」のなかにも序列があるということです。

 優秀で将来を期待されている人もいれば、精彩に欠けて縮こまるように働いている人もいます。正社員もいれば、契約社員、派遣社員、アルバイトとさまざまな立場の人もいます。そんな彼らから最大限の支持を勝ち取るためには、まず誰をターゲットにすべきなのでしょうか?

  それは、もっとも立場の弱い人です。
 もちろん、誰でも公平に付き合うのが前提ですが、まずは「もっとも立場の弱い人」に意識を向けるのが「民意」を得るうえで効果的なのです。

 そもそも、正社員のなかでも優秀で周囲からチヤホヤされている人を大切にしたところで、相手はそれほどありがたいとは思わないでしょう。周りの人も、「やっぱり、できる人を大事にするんだな」と白けた目で見るだけです。

 逆に、ふだんは立場が弱く、まわりから軽んじられている人が、課長であるあなたから丁寧に扱われると、「あの人はなんていい人なんだ」と強く思うに違いありません。そして、あなたからの頼みであれば、喜んで協力しようという気になるはずです。しかも、立場の弱い人を気づかっていれば、周りの人々も「あの人は、みんなのことを大切する人だ」と評価するでしょう。

 それだけではありません。
 彼らを味方につけると、思わぬ援軍となってくれます。

 以前、ある不動産会社のコンサルタントをしていたときのことです。人事制度改革のために、従業員のヒアリングをしていたのですが、若い人たちから非常に強い支持を集めている課長がいました。特に、女性スタッフからの支持が高かった。ほとんどの女性が、彼への感謝を口にしました

「私は、あの方のおかげで派遣社員から契約社員になれたんです」
「あの人がいたから、子育てしながら働き続けることができました」

 なかには、

「課長を悪く言う人がいたから、“私の前で課長の悪口を言わないでよ。いい人なんだから”って言ったこともあります」

 という女性もいました。
 これだけの味方をつくれば、強い。
 彼の足を引っ張るために悪口を言おうとすれば、かえって女性陣に嫌われて評判を落とす羽目になります。むしろ、彼女たちに同調したほうがメリットがあると判断する人が多いでしょう。味方が多い人は、潰されにくいのです。