現在、世界経済のパラダイム(構造)は、信じられないほどのスピードで、大きく変容している。米国の大手自動車メーカーや金融機関など、その変化に対応できない部分には軋轢が生じ、それをきっかけに未曾有の速さで経済活動が低下している。

 現在起きている景気の急落を、「単なる景気が落込む現象」と見るのは適切ではない。むしろ、「経済構造が変化する端境期」と見たほうがよい。

 つまり“20世紀型経済モデル”が衰退していくなかで、次の“21世紀型経済モデル”が明確な姿を見せないため、世界経済が一種の“断層”に落ち込んでいると考えれば、わかり易い。

 大手企業の経営者の1人は、「今起きていることを考えると、新しい時代がやってくることを予感する。それを考えるとわくわくする」と言っていた。その通りかもしれない。

 もちろん、新しい時代の到来を楽しむ前に、我々は毎日の暮らしを考えなければならない。特に、多くの従業員を預かる企業経営者であれば、何とか会社の経営状態を維持して、従業員全員の生活水準を保つことを考える必要がある。今は、身を縮めて不要不急の出費を抑え、次の景気の波を待たなければならない。

 問題は、「次の景気の波は今までの波と違う可能性が高い」ことである。

 これまでは、米国が借金をして世界中からたくさんのモノを買ってくれていたため、世界経済は高成長を続けて来た。それは、いわば“20世紀型経済モデル”だ。

 しかし、今回のサブプライム問題に続く一連の金融混乱で、そのモデルを維持し続けることが困難になったことは明らかだ。また、原油に過度に依存する産業構造にも、無理があることが明らかになりつつある。

 今後は、新しい“21世紀型経済モデル”が必要となる。足元の状況だけに囚われ過ぎていては、経営者としての責任を果たしていることにならない。我々も、新しい時代の波に乗り遅れないように、発想の転換を心がけるべきだろう。