いざ対面、一転して
論調は後ろ向きに

 他方、日中首脳会談は予定されながらも、「スケジュールは未定」という状態が続いていた。10日早朝、テレビではプーチン大統領との会談を含む、APEC期間中の習主席のスケジュールが報じられたものの、そこには日中首脳会談は織り込まれていなかった。

 同日午後、上海市民が持つスマートフォンに微博が配信した「握手シーン」が流れてきた。安倍首相と対峙しながら「会いたくない」とでも言うような習国家主席の顔つきは、瞬く間に大衆の呆れ笑いを誘った。ロシアや韓国の首脳を迎える「笑顔」の画像も貼り付けられ、日中関係の悪さが余計に強調された格好となった。

「顔つきを見れば心の状態がわかる」ということを意味する「出売」(裏切りという意味もある)という言葉が、即時に両首脳の対面を形容するキーワードになった。

 その晩の討論番組では、対話が再開されたとはいえ「国民感情を傷つけることは許されない」「門を開いたからといって、何でもありというわけではない」など、一転して後ろ向きな議論が展開した。司会のアナウンサーも険しい表情で、「表情を見よ、態度を見よ、その厳しい表情から何を読み取るのか」と、再び空気を凍らせた。

 筆者は折しもこのとき上海にいた。日本側では「首脳同士は手を握りたいが、中国は内政に配慮し対外強硬路線を続けている」とし、中国はあくまで改善に前向きである、とする解釈が強い。対外強硬路線の裏には、2年目を終えた習近平政権の基盤強化がある。

 在中国日本大使館の元大使である宮本雄二氏は、先ごろ都内で行われたセミナーで「中国は日本を悪役に仕立て上げ、それを懲罰する偉大な指導者であることを国民にアピールしている」とし、「外交は内政に乗っ取られた」との憂慮を示した。それでも日本では、会談が実現すれば、少しはよくなるだろう、との期待が広がっていた。

 だが、10日以降、習主席が見せる一連の日本の首脳への態度は「楽観するな」とでも言いたげな冷ややかさが際立った。幸先の良さを期待させるどころか、少なくとも中国では、関係改善は「まだまだ遠い」という印象を強くさせるものとなった。