分割案は弁護士がつくり、相続税の申告や対策は税理士が担当していました。両者の打ち合わせや意思の疎通は不可欠ですが、どうもそれができていなかったのでしょう。
相談した専門家と税理士が打ち合わせをし、土地の評価を下げて相続税1億円を減らしました。この節税には妹たちも納得してくれました。さらに母親の取得割合まで変えたかったのですが、分割の割合を変えれば節税になると言っても、妹2人には、真意が伝わらないと判断。遺産分割協議の調印を終えたところでしたので、分割内容の変更は断念しました。
こうして節税の機会を逃し、家族の亀裂は決定的なものとなり、妹2人とは絶縁状態。母親とMさんは体調を崩し、病院でうつ状態と診断されたほど。いまだ体調は完全には戻らず、薬が手放せない毎日で、家族関係の修復は望めず、悔いが残る結果となってしまいました。
相続の手続きが始まってから、1年未満の間、いままでとても仲のよい兄妹だったのに、Mさんにとってはこの展開は予想もしていなかったことでした。
家族がばらばらになってしまい、相続で失ったものの大きさは計り知れません。自分の健康も、家族の信頼も替え難いものです。いくら有名で優秀な専門家をそろえたとしても逆効果になりかねません。まずは争いを引き起こさないことが大事なのです。
【この事例の教訓】
・相続人と専門家、弁護士と税理士のコミュニケーションが取れていなかった
➡相続人全員と専門家が常に情報共有しながら進めるようにすることが大事
・弁護士が高圧的で相続人の意見を聞いてくれなかった
➡一部の人の意見を押し通そうとするのではなく、全員の意見を聞いていくことが大事