事例1)弁護士は兄の味方? 妹も弁護士を頼んで家族が崩壊したMさん

【相続事情】一流メンバーをそろえた

 M家は代々の地主さんで父親は地元の名士でした。亡くなったとき、長男のMさんは顧問弁護士や顧問税理士に加えて、テレビ出演もする有名な弁護士と税理士が数十名在籍する会社にも依頼し、一流のメンバーでプロジェクトチームをつくりました。財産は不動産が大部分、賃貸管理業の法人もあります。他の相続人は母親と妹2人。家族関係は円満でした。父親には公正証書遺言があり、母親と跡継ぎのMさんが大部分の財産を相続することは、2人の妹は前々から承知していました。

【これが課題】弁護士の強引さが妹との関係を悪化させる

 ところが、公正証書遺言に不備があり、遺産分割協議をすることになってから、ぎくしゃくしはじめました。遺言では貸宅地を妹たちに相続させるとなっていましたが、Mさんは煩わしくならないように妹たちには現金を渡そうと思い、貸宅地は自分が相続しようと考えました。その意向を有名弁護士に話したところ、弁護士はMさんの意向を優先するあまり、「遺言通りにしたい」という妹2人の主張を聞き入れようとせず、強引に押し切ろうとしたのです。

 妹2人にとって弁護士の発言は高圧的で、とても自分たちの意見を言える雰囲気ではありません。Mさんが財産を多くもらうための策略だと思い込み、自分たちで別の弁護士を立ててしまったのです。こうして、話し合いは弁護士が間に入ることになり、きょうだい同士では話ができないほど対立してしまったのです。

【こんな結末になった】節税の機会を失った

 困ったMさんが他の専門家に相談したところ、土地の評価をし直せば、相続税が約1億円節税できることがわかりました。母親の取得割合を大きくすると、さらに納税を減らせるとも言われました。しかし、すでに分割案に従い、母親の節税対策ができる候補地をMさんが相続してしまっていました。