雇用面では成果上がる。
が、やはり格差は拡大した

 一方、アベノミクスの恩恵は中小企業や個人に及んでいないと批判されるが、その点はどうだろうか。

 完全失業率を見ると、民主党政権時代のピーク5.2%(10年6月)が、この10月には3.5%にまで低下した。増えているのは非正規雇用という批判もあるが、景気の展望に明るさが出て、働く人々が増えたことは確かだ(図表2)。

 では、賃金どうか。安倍政権は「賃上げ率は過去15年間で最高の2%」と実績を誇る。ここでは大企業と中小・零細企業で賃上げ格差があるという事実はおいておくとしても、物価上昇を調整した実質賃金は13年7月以降16ヵ月連続でマイナスを続けており、民主党政権時代よりもマイナス月が多い。特に、消費税率引き上げ後のマイナス幅が大きくなっている。要は、物価上昇に賃金の上昇が追いついていないわけだ(図表2)。

 大企業と中小零細企業の格差はどうか。図表3は資本金で分けた経常利益の増減である。資本金10億円以上の大企業が順調に利益を伸ばしているのに対して、1000万円未満の中小零細企業は12年度、13年度はむしろ減益だ(図表3)。

 なぜこうなったか。一つには、異次元金融緩和による円安効果の誤算がある。図表3で分かるように、円安によって輸入金額は増えているのに対して、輸出金額はほぼ横ばいだ。輸出のうちドル建ては約5割、輸入では約7割だから、円安になれば支払いに必要なドルを手当てするためにより多くの円が必要になり、円ベースの輸入金額の方が大きく膨らむ。結果、貿易収支は2012年の半ばから毎月赤字が続いている(図表4)。

 かつての日本であれば、円安になると輸出価格を引き下げて価格競争力を回復させて販売数量が増え、それが国内の生産数量増から中小企業への生産増加につながった。それが、長く続いた円高と新興国などの成長により、海外でビジネスを展開する大企業は生産拠点を海外の需要地に移転。しかも、今回の円安局面では輸出価格をあまり下げていないので数量が伸びない。このため国内の中小零細企業には生産増加という数量増の恩恵が及ばない。生産構造、大企業の行動変化が誤算を招いている。