富士ゼロックス社長 山本忠人
撮影:住友一俊

 円高ドル安や原材料高騰など、ドキュメント市場を取り巻く事業環境は厳しい。だが、ドキュメントを扱う顧客企業のニーズが多様化し、そこに新たな市場が生まれ、われわれのビジネスチャンスが拡大している側面もある。

 高度成長期には大量印刷に向くオフセット印刷が主流だったが、今後は、短納期・オンデマンド・少量多品種印刷に対応できるプロダクション印刷の構成比が増える。

 たとえば、クレジットカードの請求明細書に同載する企業広告を、(カードの使用履歴から販促効果が高くなるように)会員ごとに変え、しかも短時間で印刷することができるようになる。

 1990年代に米ゼロックスが創造したプロダクション市場は現在、約1兆円強になったが、2011年には1.4兆円まで拡大する見込みだ。

 その有望市場を睨み、リコー、コニカミノルタなどが続々と参入し、独壇場に攻め入られた格好になっている。危機感を抱いてはいるが、競合他社の参入は業界活性化へ直結する。

 そうした状況下では、ハード(機械)の性能のよさを顧客企業に説明する従来型の営業だけでは通用せず、顧客企業がどんな課題を抱え、どうやったら解決できるのかというソリューション提案がますます不可欠になるということ。

 今春、国内の営業組織を刷新し、地域別組織から業種別組織へと組み替えた。顧客の業種特性を知ることなしに、ソリューション提案などできるはずもないからだ。

 ハードと営業力の合わせ技で厳しい価格競争を乗り切りたい。

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)