たとえば、報告書案を見てみよう。7ページには、

「c) 生活保護受給世帯の居住状況
○ 生活保護受給世帯の住宅水準は、一般世帯(生活保護受給世帯を含む)に比べると、低くなっている(図表4~10)。

○ 生活保護受給世帯が居住する民営借家における最低居住面積水準の達成率は、単身世帯で 46%、2人以上世帯で 67%となっており、一般世帯(生活保護受給世帯を含む)の最低居住面積水準が、単身世帯で 76%、2人以上世帯で 86%となっているのと比較すると、大きく下回っている(図表 11,12)。

「生活保護利用者は公営住宅に住めばよい」という意見は多い。しかし公営住宅の数が十分でなく、特に単身者は民間賃貸住宅を選択せざるを得ない
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○ 住宅種類別にみると、民営借家の生活保護受給世帯は最低居住面積水準及び設備条件を満たしていないものが単身世帯で約7割となっている。また、給与住宅の最低居住面積水準達成率も 34%となっており、一般世帯(生活保護受給世帯を含む)の達成率を大きく下回っている(図表 11,14)。

 それに対して、公営借家、UR 賃貸住宅での最低居住面積水準達成率は高くなっており、居住する住宅の所有関係によって、住宅水準が大きく異なっている(図表 14)。

民間賃貸住宅・公営住宅など、どのような形態の住宅においても、国交省の最低居住面積水準を満たす住宅に住んでいる生活保護利用者は、一般世帯に比べて少ない
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○ 以上のことから、生活保護受給世帯において、より適切な住環境を確保するための方策を検討することが必要である」

 と、生活保護の「住」が一般世帯に比べて劣悪であることが述べられている。このことは、厚労省としても認めざるを得ないのであろう。面している道路の道路幅(本連載政策ウォッチ編・第82回参照)など、安全・健康を損なう可能性もある住居に住む生活保護利用者が多いことが、なぜ本文に記載されなかったのかは気になるけれども、厚労省が、

「生活保護利用者の住居は一般に比べて劣悪すぎる」

 という事実を認めたこと自体は前進といえよう。

生活保護世帯の「住」は現状でも、安全性・利便性などあらゆる観点で、一般世帯の「住」より劣悪である
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住宅扶助減額で
「よい住」へと誘導?

 では厚労省は、どのように解決されるべきと考えているのだろうか? 報告書14ページを見てみると、

「現行の住宅扶助特別基準は上限額の範囲内で必要な家賃額の実費を支給する仕組みであるものの、住宅の質に応じた上限額の設定がないため、居室が著しく狭隘で設備が十分でない劣悪な住宅で、生活保護受給者の自立の助長に支障をもたらす恐れがあるにもかかわらず、住宅扶助特別基準で家賃額を設定し、不当な利益を得る、いわゆる貧困ビジネスの温床にもなっていると考えられる」

 という記述がある。これは一概に「貧困ビジネス」と言い切れるものではなく、ちょっとした生活支援や見守りなどのサービスに対する対価・生活保護利用者が抱えていることの多い高い死亡リスクなどに備える費用という面もある。しかし、そもそも、「生活保護だから住宅扶助上限額まで家賃を取ろう」という意図が読み取れる住宅は多くはない。

 このことは、8月に行われた実態調査でも明らかになっている。報告書11ページには、

「近隣同種の住宅の家賃額より明らかに高額な家賃が設定されている疑義の有無(福祉事務所のケースワーカーが回答)についてみると、『疑義あり』が 0.6%、『疑義無し」が 90.4%、『判断ができない』が 9.0%となっている」

 とあり、少なくとも90%は近隣に対して「生活保護だから高い家賃」とはなっていない。また、「疑義あり」の0.6%(114世帯:抽出調査のため)についても、「保証料・敷金・礼金・共益費・管理費を上乗せしているため」というありがちなパターンが87%、残る13%は「家事援助、健康管理や生活支援などのサービスの対価が家賃に上乗せされている」というものであった。

 本来ならばサービスの対価は別立てで行われるべきであろうけれども、生活保護利用者の生活の場の選択肢が現在でも充分に多くはないことを考えると、「いたしかたない」の範囲と考えるべきではないかと筆者は思う。いずれにしても、今回、厚労省はこの点を問題にする気はなさそうだ。

 筆者がどうにも気になるのは、同じ11ページに、

「より適切な住環境を備えた住宅へ誘導していくという観点から、床面積が狭小な住宅については、床面積に応じた支給額とするなどにより、住宅扶助費の支給額を住宅の質に見合ったものにする必要がある」

 という記述があることだ。

 単身者の場合の最低居住面積水準・25平方メートルを満たさない住宅に住んでいる比率は、民営借家に住んでいる一般世帯では20%であるのに対し、生活保護世帯では59%である。過去、さまざまな物品やサービスが生活保護利用者に対して「ぜいたく品」とみなされなくなる基準は、「一般世帯の70%に普及している」であったということを考えると、生活保護世帯に対して「せめて最低居住面積水準を満たす住と、それが可能な住宅扶助を」と考えるのが自然であろう。しかしこの記述は、

「たとえば、単身者の住宅扶助特別基準額が5万円の地域で、専有面積15平方メートルの、ベッドだけでいっぱいになってしまうようなワンルームに住んでいる単身の生活保護利用者に対しては、面積に応じて3万円の住宅扶助しか支給しないということ? それによって転居を促すということ?」

 と首をかしげてしまうような記述だ。