絶好調とされる東京都心のオフィスビル市場に、暗転の兆しが見える。2012年に大量供給が控えているためだ。

 オフィス市況の好不調の目安とされるのが、空室率5%ライン。オフィス仲介の三鬼商事の調べによると、2月末時点の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は2.77%と好調だ。賃料も高止まりしており、丸の内エリアでは、2003年前後は坪当たり3万円台という成約が多かったが、現在では7万円という事例が出ているほどだ。

 今後も2~3は新規ビルの供給が少ないため、「マンション市場は厳しくなってきたが、オフィス市場はまだまだ堅調」(大手不動産会社幹部)と強気の関係者が多い。

 ところが、その先の2012年になると、かつてオフィス業界にショックを与えた“2003年問題”を上回る規模の大量供給が起こりそうなのだ。

 2003年に主役となったのが六本木ヒルズ、汐留の再開発、JR品川駅東口周辺に完成したビル群だった。この年に東京都内で新規供給されたオフィスの貸し付け有効面積は約115万平方メートルで、例年の2倍に上るものだった。

 これに対して、ある大手不動産会社の試算によると、2012年は現時点で把握されているものだけで、130万平方メートルを超える見通しだ。

 主なものは、大手町連鎖型再開発の第2次事業、東京中央郵便局の建て替え、東銀ビルを含めた3棟の一体建て替えなど。大手町・丸の内に多いが、この3つの大プロジェクトだけでも、延べ床面積が50万平方メートルに上る。

 しかも、2003年の際には、景気回復を追い風にオフィス需要が旺盛になって市況が回復したが、2007年以降は団塊世代の大量退職によりオフィス人口が減少し、需要そのものが後退トレンドに入っている。また、ベンチャーなどによる会社設立も、外資の対内直接投資も、共に低下傾向にあり、供給過剰を吸収する堅調な需要増という“救世主”は期待できない。

 都心不動産に踊った業界の宴の終わりは近い。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 須賀彩子)