だが、マイナス改定はサービスの総和。厚労省は「認知症や看取りなど重要なサービスは評価する」と原則論を言い続ける。各在宅サービスや施設などのそれぞれの報酬がどのようになるかはまだ明らかではない。

 2月6日に開かれる社会保障審議会介護給付費分科会の最終会合で厚労省から提案される。その内容を見ないことには、ただちに一概に介護サービスの劣化につながるとは言えない。ただ、施設から在宅へのケアの大きな流れに加速がつくのは間違いないだろう。

 同分科会で事業者側から強い要望があった職員の「処遇改善加算」の扱いも注目される。財務省は「全体の報酬を下げても、賃金に回すこの加算で月収は1万2000円アップさせられる」とアピールしてきた。

実は大きく異なる
認知症ケアと身体ケア

 介護保険の報酬改定が耳目を集めている割に、注目度が低いのが認知症ケアの長期プランだ。しかし、今後の高齢者介護で最も重要なのは認知症への関わり方である。

 脳梗塞やくも膜下出血などいわゆる脳卒中による身体障害に対するケア、つまり身体介護はかなりの程度その道筋が明らかにされ、介護の手法も確立されてきた。また、「寝かせきり」「オムツ」「機械浴」「身体拘束」「下剤」などをできるだけ止めていく、減らしていくことをケアの目標とする法人が各地で現れてきた。高齢者本人の側に立って、より良い介護を目指す動きは広がっている。集団での管理主義に基づく介護から、個々人の生活に寄り添った個別介護への転換が多くの現場で意識され出したからだ。

 介護保険の前段階施策だったゴールドプラン(1990年から94年)と新ゴールドプラン(1995年から1999年)では「寝たきり老人ゼロ作戦」「ベッドからの起床」が謳われた。

 つまり、身体麻痺を想定した介護であった。介護保険もその範囲内で多くのサービスや施設が運営されてきた。介護の目標とその手立てが軌道に乗りつつあるといっても過言ではない。

 ところが、認知症介護は様相が全く違う。

 例えば、介護保険を初めて使う時に欠かせない要介護判定の聞き取り調査。「片足で1秒ほど立てますか」という項目は身体介護が必要な高齢者には、適切な問いかけだが、認知症の軽度者にはほとんど意味を成さない。簡単にクリアできる。身体機能に衰えがないからだ。記憶や判断能力を問う設問が必要なのである。

 脳細胞の障害によって暮らしが成り立たなくなる。その支援活動である認知症ケアは身体ケアとは大きく異なる。心の中に分け入ったうえで接しなければならない。外見からは窺い知れない心の葛藤の見極めが不可欠だ。認知症は介護保険制定時には、要介護者の一類型としか見なされなかった。それが今や、社会全体で取り組まねばならない最重要課題になりつつある。

 家族介護が続けられなくなって施設入居を迫られるのは認知症だからというケースが大半だろう。身体障害だけなら意思疎通ができるので、車いす生活でも在宅サービスをフルに使えば何とか同居できる、という声が聞かれる。意思疎通がままならないと介護は別次元に転化する。認知症ケアはそれほど難しい。