認知症高齢者がすでに受診している病院やかかりつけの診療所医師と「連携しながら」と厚労省は謳っているが、実際は「押しのけて」特別チームを介入させようという制度だ。現行の医療制度では、きちんと認知症を診ることができる医師が少ないため、いわば特別な訓練を受けた特殊部隊を投入しようという作戦ともいえる。それだけに、既存組織の抵抗は大きい。

 新オレンジプランで唯一の高評価を得られる項目だろう。

 日本の認知症ケアが欧米諸国と比較する際に必ず問題となるのが精神科病院への入院である。(4)の中で言及した。「その必要性を見極めたうえで、標準化された高度な専門的医療サービスを短期的・集中的に提供する場として、長期的・継続的な生活支援サービスを提供する介護サービス事業所や施設と適切な役割分担が成されることが望まれる」と記す。精神科病院を「短期・集中の場」と明確に区分けした。そして「精神科病院等からの円滑な退院や在宅復帰を支援する」と結ぶ。

 脱病院策として前向きではあるが、現在の認知症入院者をいつまでに何人に減らすかという肝心の数値目標は相変わらず出て来ない。踏み込み不足と言わざるを得ないだろう。一方で、欧州諸国は数字を掲げて、脱病院への道筋をつけてきている。

なぜ認知症の「訪問介護」はないのか

 では、現行の介護保険の中で認知症高齢者向けのサービスはどのようになっているのか。(2)のなかで、「認知症グループ―ホームは認知症ケアの拠点」と位置付け、「認知症対応通所介護(デイサービス)」の展開が期待されているとある。共に、介護保険スタート時から設けられたサービスだ。今更強調すべきことではないだろう。

 この2つのサービスは「入所」と「通い」である。ではなぜ「訪問」がないのだろうか。「認知症対応訪問介護」というサービスが、単なる訪問介護とは別に設定されてもいいのではないだろうか。認知症ケアに精通したヘルパーが自宅に来て、お茶を一緒にしたり昔のアルバムを見ながら思い出話の相手になってもらう。長い時間をかけて話を聞くだけでもいい。介護家族はその合間に買い物や趣味の時間を採ることができる。

 掃除や洗濯など決められた作業を極めて短時間にこなす現行の訪問介護は、身体介護を必要とする要介護者向けのものである。認知症者向けが別にあるべきだろう。天気の話から始まって、トランプや百人一首、歌、手芸、リンゴの皮むき、キャベツの千切りなど、本人が得意なこと好きなことを付き合う。5~6時間も一緒に過ごすことができれば、家族にとってレスパイト(*)効果は大きい。

 実は、認知症高齢者が好みの時間、気持ちが休まる時間を過ごせるように支援することこそ認知症ケアそのものであるはず。遠方まで外出するデイサービスや入所のグループホームでは実践されている。同じことを自宅で楽しむ、それが認知症訪問介護である。

 新オレンジプランで盛り込んでいれば、評価が高まったはずだ。

(*)一時的中断、延期、小休止などを意味し、介護する側を一時的に休ませ、リフレッシュさせることを指す。