創業者は「星一徹」たれ
小山 あなたのお父さんのことでもう1つ感心したのは、事業承継のタイミングです。
一般的に親は、子どもに会社をよい状態で渡したいと考えます。
実はこれが最悪なんです。だから99%の経営者は間違っているんです。
創業者と2代目で圧倒的に違うものがある。いったい何だかわかりますか?
石坂 創業者は社員もお客様もいないところから始まりますが、2代目は先代の財産を引き継いでスタートすることでしょうか。
小山 はい、そうです。自然の川で泳いでいる魚と養殖池の魚くらいの差があるんです。
創業者は切った貼ったをやらないと生きていけない。ところが、2代目以降は会社の環境は整っているし、お客様もすでにいるからどうしても経営者として甘くなる。
そういう意味では、会社がピンチのときに事業承継して、悲惨な経験をさせるのが正解。親としてはつらいけどね。そういう点であなたのお父さんは偉いと思う。
石坂 社長になった私の前には3つの難題がありました。
1つ目は、廃棄物の委託探しです。当時うちにあったダイオキシン対策炉からはダイオキシンは出ませんでしたが、日増しに反対運動が激化するなか、父は「焼却をやめる」決断をしました。
小山 完成間もない15億円の焼却炉を壊すというのは英断でした。何かをするためにはやらないことを決めなくちゃいけない。
石坂 2つ目は、産廃業者のイメージを払拭した清潔感のあるプラントをつくろうと決意しました。父からは「反対運動が起きているいまの状態で県が開発許可を出すはずがない」と言われましたが、役所に出向いて開発許可の申請を直談判しました。
3つ目が「ISOの3統合マネジメントシステム」を取得することでした。無我夢中でほとんど記憶がないほどです。
小山 それがあなたの経営者としての財産になったはずです。娘にそれだけのことをさせられる親はすごい。『巨人の星』の星一徹さながらです。
苦難にあえいで何とかしようと立ち上がる。これが経営者の出発点なんです。