地方銀行界で昨年急激に高まった業界再編への圧力だが、今年も追及の手が緩むことはない。監督官庁である金融庁が、地銀の主力事業の一つである住宅ローンの収益性について徹底調査を開始したからだ。

銀行の住宅ローン事業の収益性について調査を始めた金融庁。調査対象外の地方銀行もいつ自分たちに飛び火するかと気が気でない
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 調査の対象となったのは主要行と30行程度とみられる地銀・第二地銀。地銀は「融資事業における住宅ローンの比率が高く、リスク管理が重要なところ」(金融庁幹部)を選んだ。貸出金に占める住宅ローンの割合が30%辺りのところで線引きをし、東日本大震災の復興需要などの特殊要因を勘案して対象地銀を抽出したもようだ。

 金融当局の関係者によれば、調査項目は変動金利、固定金利、ミックス型それぞれの貸出残高とそれらの今後の推移、過去の損失率や利ザヤなど細部にわたり、住宅ローン事業単独での収益性をはじき出したい思惑が透けて見える。

 地銀界が今回の調査を恐れる理由は、金融庁が貸出金の“量”ではなく“質”に焦点を当てていることにほかならない。

 “量”で考えれば業界全体で貸出金残高は伸びている。ただ、歴史的な超低金利が続き、多くの銀行で利ザヤが悪化の一途をたどっている。その最たる例が住宅ローンだ。三井住友信託銀行が10年固定型の住宅ローン金利を2月から年0.85%にするなど、主要行で過去最低金利の更新が相次いだ。もうからないといわれて久しい住宅ローンの底なし沼状態はなお続く。