聞き手を「主役」にする
人は、「トクする」あるいは「損しない」ことなら、「やってみようか」「考えてみようか」と腰を上げますが、そうしてもらうためには、当事者意識をもたせなければなりません。
ところが、ここでつまずくケースが少なくありません。どんなふうに話せばいいのか、わからないのです。
まず、相手を「主語」にして話を組み立ててみましょう。
「私が提案するのは……」「弊社の製品の特徴は……」などと、自己アピールに終始する営業マンを見かけますが、そこを「皆様が抱える課題は……」「御社の課題を解決するには……」と言い換えるのです。
主語を一人称から二人称にすることで、否応なく、話し手は聞き手の立場で物事を考えるようになります。一方、聞き手は自分のことが話題になっているので、話を無視することはできません。
次のような場面を思い浮べてください。
あなたは、町工場の社長に最新のパソコン会計システムの導入を働きかけています。
「弊社の会計システムは、個人事業主から一部上場企業まで、幅広いお客様から高い評価を受けていると自負しております。このたび、私がご提案しますのは、通常の経理業務だけでなく、在庫管理から給与計算まで一括管理できるモデルです。しかも、クラウド型なので、外部パートナーとの共同利用も可能です」
職人肌の社長は、〈一括しておカネの管理ができるのはありがたいが……〉と思いつつ、すぐ導入する気にはなれません。それは、導入したときの「利益」がぼんやりしているからです。