自分の感情をコントロールできない大人を、
子どもは「大人とは認めない」
母親のことが大好きな男の子は、勉強もするしお手伝いもしますが、母親のことが嫌いだと、すべて「言われたことの反対」をやります。「こんな母親に好かれたくない」と思っているからです。
好かれていない母親は、今日から正論を言うのをやめたほうがいい。好かれていない母親が何を言っても、逆効果です。まずは1年くらいかけて、「好かれる母親」になってから、ニッコリ笑って「こうしてくれると、お母さんは嬉しい」と言うと、やってくれます。
子どもは、感情的な母親(大人)を嫌う傾向があります。子どもは、自分の感情をコントロールできない大人を、「大人とは認めない」のです。
たとえば、子どもは、「バカ」とか「アホ」と言われると、「そんなことない」と真っ赤になって怒ったり、抗弁したり、喧嘩をしたりします。子どもは、感情を制御できません。
それなのに、お父さんから「バカ」と言われたお母さんが、言い返したり怒ったりせずに、ニコニコ笑いながら受け止めていると(感情を制御していると)、子どもはお母さんのことを「大人」として認めます。
何があっても感情をコントロールできる母親を見て、尊敬するのです(大人の語源は、音なし。何があっても大きな声を出さない人を、大人と呼ぶようになりました)。
そして、尊敬する母親から言われたことは、素直にやるようになります。母親に好かれたいからです。
ところが、母親が自分の感情をコントロールできずに、ヒステリックに怒っているのを見ると、子どもは「お母さんも、僕たち子どもと変わらないじゃないか」と残念に思い、親の言うことを聞かなくなります。
母親は、子どもに対して、「大人」であることを示したほうがいい。何があってもイライラしないで、笑顔を保ち、感情をコントロールする。そうすれば男の子は、母親を尊敬し、好きになります。
女の子は、母親をお手本として、母親のコピーとして育ちます。害虫を見たら「キャー」と叫んでスリッパでバシッと叩く、という母親の姿を見た女の子は、大人になると、母親と同じように、「キャー」と叫んでスリッパで害虫を叩きます。
母と娘のこの連鎖を「キャーの遺伝」と名付けましたが(笑)、女の子は、母親の言葉よりも、行動を見て育ちます。
母親と同じ行動パターンを身に付けるのです。母親が娘を見て嫌悪感を覚えるとしたら、子どもの中に、自分の嫌な面を見るからでしょう。
母親が、親子ゲンカの最中に、「あなたなんか生まれてこなければよかった」「産むつもりじゃなかった」と言ったとします。すると、その言葉を言われた娘は、自分が母親になったとき、同じセリフを使うようになります。
そして、代々、その言葉が受け継がれていくと、「わが子を殺してしまうような母親」が出てしまう可能性があります。ですから、代々受け継がれた「遺伝」をどこかで断ち切らなければなりません。
娘をいい子に育てようと思ったら、子どもに「ああしろ、こうしろ」と言う以上に、自分の行動や態度を見直すことが先決だと思います。