小笠原=Bonin(ボニン)?

 NHKの全国天気図に必ず出てくる場所で、2番目に人口が少ない場所はどこでしょう?

 上記の図でいえば、沖縄の南東300㎞にある大東諸島(南大東島と北大東島)の人口が合わせて2100人余(2010年)で最少です。2番目はそう、東京の南南東1000kmに浮かぶ小笠原群島です。人口は父島・母島を中心に2800人余(2014年)。2008年からやっと、天気予報サービスが始まりました(それまでは、津波警報のみ)。

 小笠原群島は、父島・母島・聟(むこ)島など(*1)からなり、それに西ノ島(*2)、硫黄島、南鳥島、沖ノ鳥島などを合わせて小笠原諸島と命名されています。面白いのはその英語名です。

・小笠原諸島:Ogasawara Islands
・小笠原群島:Bonin Islands

 近年、国際的な地図表記は、領有国の使う固有名詞を尊重するようになってきているというのに、なぜBonin(ボニン)なのでしょう?ちゃんと、理由があります。

小笠原群島は4800万年前に生まれ、ずっと独りだった

 小笠原群島は4800~4400万年前、火山活動や海底の隆起によって生まれました。周囲に陸地はなく、その後、一度も大陸と地続きにもならず、ずっと独りぼっち(*3)でした。

 でも、海を渡って、いろいろな生命が小笠原群島にたどり着きました。ただし、1000㎞の大洋を超えられた動植物は限られました。たとえば植物でいえば、

 A:種が非常に軽いもの
 B:種が水に浮くもの
 C:鳥が実を食べ運んでくれたもの

 の3パターンです。本州には多いシイやブナも、その実(ドングリ)は重くて沈んでしまうので、ダメでした。ABCの中でも、水持ちの悪い酸性の火山島にその居場所を見いだせたものだけが、この絶海の孤島群に新天地を見出しました。

 動物でいえば、小笠原群島に自力でたどり着けた哺乳類はコウモリのみ、両生類は皆無、でした。

 たどり着いた者たちはその後、この孤島群で、数千万年をかけて独自の進化を続けることになりました。固有種の誕生です。

*1 各々多数の島からなる列島である。
*2 2013年11月に始まった火山活動により、面積が10倍近く(0.29平方km→2.5平方km)になっている。
*3 海洋島、という。日本にはほとんどない。