発売開始からデジタル市場の話題を独占して来た「iPhone」。日本でもヒットしたことは間違いないが、これが「大ヒット」と呼べるかどうかは、微妙である。

 iPhoneは一般の携帯電話と違い、いわゆるスマートフォンに近い存在なので、そもそも通常の携帯電話に置き換わるような存在にはならないのだ。もちろん、“スマートフォン”としては、よく売れている。

 iPhoneの特徴の1つが、アプリケーション群だ。単に色々なアプリケーションが追加できるだけではなく、「App Store」を通じてユーザーがそれらを直接購入できる仕組みも用意されているのだ。

 これは、「iPod」のヒットによって、「ダウンロード購入」の仕組みを確立させた流れと似ている。

 iPhone用のアプリケーションは、数え切れないほど登場している。魅力的なゲームも多いのだが、残念ながら制作者が期待したほど売れていないものが多いようだ。

大辞林
大辞林のインデックス表示で「春の季語」を開いてみた。指先でたぐっていくと次々に春の言葉が現れる。それにしても、日本語はなんて美しいのだろう。

 ところが、そんななか、「辞書ソフト」が売れに売れていることをご存じだろうか。なんと、物書堂がリリースした「大辞林」がヒット中なのだという。

 iPhone用のソフトは、「無料や100円」というものが多く、当初高価な値付けをしていたソフトが大幅に値下げをしている様子も度々目にする。売れていれば値下げなど考えられないから、要は苦しいのだろう。

 それに対して、大辞林はiPhone用ソフトとしては非常に高価で、2500円もする。にもかかわらず、常にランキング上位に入るほど売れているのだから、すごい。

 「約25000本も売れていて、当社でも驚いているほどです」(株式会社物書堂の廣瀬則仁代表取締役)

 廣瀬氏は、元々Mac用のワープロ等を開発していたエルゴソフトに所属していた。だが、同社が事業を停止するに当たって、同僚の荒野氏とともに独立し、物書堂を設立したのである。

 「資本金600万円でスタートしました。2人で30万円ずつ給料を取って、何ヵ月継続できるのか――そんな状態でのスタートでした。それでも、辞書ソフトを作るにはそれほど時間がかからないので、何とかやって来れたのです」(廣瀬氏)

 辞書ソフトのソースは、すでに出版社が作り上げている。それをソフトに組み込んでいるわけだ。同じ辞書ならば、紙、ソフト、電子辞書など、どんな媒体でも基本的に内容は変わらない。