前回述べた「横とび検索」の場合、「検索対象の名前がわからない」といっても、忘れているだけのことである。記憶のどこかには残っているので、適切な手がかりが得られれば、思い出すことができる。

 これに対して、「調べたい対象の名前を最初から知らない」という場合がある。具体例を挙げよう。

 金融商品などに対する投資判断の指標としてはいくつかのものがあるのだが、実際に広く用いられているのは何かを知りたいとする。このため、「金融用語辞典」の類を見つけ出したいとする。しかし、対象が「金融用語辞典」という名称になっているかどうかは、わからない。「ファイナンス用語辞典」かもしれないし、「投資用語辞典」かもしれない。つまり、探し出したい対象の名称がわからないのだ。

 こうした場合に有効な一つの方法は、すでに知っている言葉を検索してみることだ。たとえば、「ROE」(自己資本利益率)という言葉を検索してみる。この説明は、たいていは金融用語辞典の類に入っている。そこで、ROEの説明画面から上の段階に昇れば、辞典名を知ることができる。

 従来の方法は、まず用語辞典を開き、そこにある「投資基準」などの項目を開き、その中でいくつかの概念を見る、というものだった。つまり、上位概念から下位概念に降りる方法だった。

 それに対してここで述べた方法では、下位概念から上位概念に昇っている。そして、上位概念から再び下位概念に降りる。「はしご」を使って昇り降りしているのと同じなので、この方法を「はしご検索」、または「昇り降り検索」ということができるだろう。「横とび検索」の場合には横に動くのだが、この場合は上下に動く。こうした方法が有効なのは、ウェブ検索ではしばしば経験することだ。

 「上から下に降りる」のは、確立された知識の体系に従うことであり、受動的だ。これに対して「下から上に昇る」のは、問題意識が明確な場合に有効な積極的方法だ。データが電子化され、検索機能が使えるため、このような方法が使えるようになったのである。

 「昇り降り検索」は、知識の構造に関して革命的な変化をもたらすものだ。このことについては後で詳しく述べることにして、以下では、実用的な側面をもう少し探索しよう。

「部屋の名前」を見出す

 「昇り降り検索」は、さまざまな場合に用いることができる。思いつくままに列挙してみよう。