お漬物の味を損ねるのは「水分」です

おいしい漬物を漬けるには、とにかく水分を取り除くこと。
 漬物の容器に野菜を入れ、そこに塩をまぶして重石をすると、どっぷりと水分が出てきます。そこから少しずつ食べていって中身が少なくなると、またまた水分が上がります。
 そのままにしておくと余分な塩分が酸素をもらい、酸味が出てしまい味が落ちてきますので、食べて水があがったときは野菜すれすれになるぐらいまでに水分を残して、あとは捨てる。
 そうすると、最後までおいしく食べられます。重石もそのつど小さくしていきます。
 漬物用の石を探すのも情趣があります。平らがいいなとか丸いのがいいな、大きさも大きいもの、小さいもの、いろいろなものがあるといいので、子どもと一緒に探すと、また楽しいですね。

 あるとき、漬物の水を捨てていたところに、学校帰りの孫が立ち寄ったことがあります。

 「おばあちゃん、何しているの?」

 と言うので、

 「漬物から出た水分を捨てているんだよ」

 と答えました。
 そうすると「ふーん」って。
  「これを浸透作用って言うんだよ」と言うと、「学校で習った」と。
  「知っているんだね」と言うと、
  「習っただけで知らない」って(笑)。

 わたしは、そんなふうに女学校のときに化学で習ったことを今も活かしてやっているの。
 孫は習っただけで知らなかったけれど、おいしい、おいしくないだけでなく、根本的なところを話せば大変よく通じてきて、つくるときの気持ちによって味が変わることがわかるわけです。

調理は「科学」であり「物理」

 あるとき、漬かりすぎたキャベツを持て余している人がいましたので、そのキャベツを細かくして、刻んだしその葉と少量の砂糖を入れて混ぜ合わせたところ、しば漬けのようなおいしい漬物が完成しました。

 こんなふうに失敗作も切り替えていくと、楽しみに変わります。
 まさに調理は科学であり物理です。
 でも、無駄なことをしないように、すべてを見積もりながら食材を求めていきたいものですね。