なぜ鉄道のレールは鉄製なのか?

 日本に初めて鉄道システムが導入されたのは1872年、東京 新橋・横浜間が最初でした。以来、143年。今日はその縁の下の力持ちである「レール」のお話です。

 なぜ鉄道(railway)のレールは、鉄製なのでしょうか? 少なくともrailwayのrailに鉄という意味はありません。railの原義は、「真っ直ぐな棒」もしくは「真っ直ぐに導くこと」なので、railwayとはまさに線路という意味に過ぎません。

 もともとレールは木製でした。でも、あまりにすぐ消耗してしまうので、産業革命下のイギリス・ドイツで1767年頃、鉄板張り付け木製レールが考案され、すぐに(蒸気機関の発達もあって)鋳鉄製の鉄製レールがつくられるようになりました。鉄製レールと鉄製車輪の組み合わせによる「転がり抵抗」は、地面にタイヤ(*1)のそれに比べて10分の1~5分の1と圧倒的に少なく、大量輸送の要に育っていきました。

L型レール:平らなレールに垂直のフランジをつけ、これで車輪をガイドしている

 レールの形は様々に進化しましたが、最大の問題は「脱線をどう防ぐか」でした。L字型やいろいろなフランジ(出っ張り)が試されました。

 1789年、フランス革命の年に大きな発想の転換が行われ、脱線率が劇的に下がります。ウィリアム・ジェソップ(William Jessop、1745~1814)による「フランジ付き車輪」の発明です。さらに1831年、ロバート・スティーブンス(Robert Stevens、1787~1856)が「I型」をした「平底レール」を発明して、これが主流になりました。

 枕木に釘で簡単に固定できる「平底レール」と、脱線しにくい「フランジ付きの車輪」の組み合わせは、強靭な「鋼鉄製レール」の発明(*2)によって、列車を支える軌条システムとして完成しました。

*1 自動車が時速80kmで定速走行する場合、全抵抗の40%あまりがタイヤの転がり抵抗になる。
*2  1855年、サー・ヘンリー・ベッセマー(Sir Henry Bessemer、1813~1898)による発明。