自分の価値観に当てはまる物件と出合える人気サイト「東京R不動産」。このサイトを運営するチームはいわゆる普通の「会社」とは少し違う組織だ。2つの会社が共同運営という形になっているが、現場のメンバーはフリーエージェント・スタイルの個人事業主たちの集まりである。一方、「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」を運営する東京糸井重里事務所は「会社」でありながら、上司・部下という関係の中で上から下へと仕事が言い渡されるのではなく、社員の「やりたい」を尊重し、個の強い関わり方を求めるフリーランス集団のような働き方をしている組織。2社の個性は、オフィスのあり方にも表現されているようだ。対談シリーズ第3回は、「オフィス」について。
※この記事(2012年2月15日公開)は、東京R不動産がテレビ東京系列「カンブリア宮殿」に出演したことを記念して、再配信しています。

「個人の気持ちいい」を仕事場に持ち込む、
和室・縁側・ルーフテラス…

林 厚見(はやし・あつみ)
株式会社スピーク共同代表/「東京R不動産」ディレクター。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経てコロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。「東京R不動産」では主に事業面のマネジメントを担い、他に不動産の開発・再生における事業企画・プロデュース、カフェ・宿の経営などを行う。

東京R不動産・林:ほぼ日のオフィスは、すごく個性的ですよね。まず都心のビルの中にありながら、扉もデスクも壁もミーティングルームも、基本的に木でできている。ミーティングルームの1つは和室。この和室にはどういう狙いがあるんですか?

ほぼ日・篠田:和室は、東京糸井重里事務所にとっては当たり前の存在なんですよね。ほぼ日が始まって最初の糸井重里事務所は一軒家だったので、和室が普通にあったんです。当時は少人数で、それこそ全員泊まりこみで仕事をするようなこともありましたし、お客様を迎えるのにもよかったんです。

 もちろん今は泊まり込みのためということはないですけど、ほぼ日のコンテンツ用の対談をするときや、大勢でのミーティングルームとして、あるいは来客用として、何かと和室は使いやすいんです。だから2010年に、今のオフィスに移るときにも和室は作ろうということになりました。

ミーティングルームへと続く木で覆われた廊下。(東京糸井重里事務所)
オフィスの中で異彩を放つ「和室」

:オフィススペースには仕切りがないんですね。その中に、打ち合わせスペースがあって、それから窓際にはベンチがありますよね。

篠田:我々は「縁側」と呼んでいるのですが、これは和室の存在よりももっとちゃんとした理由がありまして、2人以上で一緒に仕事をするときに、対峙して座るのではなく、ベンチで並んで座って仕事をする。その距離感の象徴としています。

取材時もちょうど社員の方が寝転んで仕事をしていた「縁側」と、家のリビングに置かれているようなソファ。

:その方が、アイデアが生まれやすいですか?

篠田真貴子(しのだ・まきこ)
米ペンシルバニア大ウォートン校MBA、ジョンズ・ホプキンス大修士。日本長期信用銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、2008年に東京糸井重里事務所に入社。取締役CFOとして、管理部門、事業計画、経営企画のような仕事を組み立て中。

篠田:ミーティングルームと違い、オープンスペースで誰でも通れる場所なので、例えば手帳チームがミーティングをやっているなと思うと、ちょっと覗いてみたり、通りがかりに意見を挟めたりしますよね。東京R不動産にも、ほぼ日での和室のような、こだわりのルーフテラスが『だから、僕らはこの働き方を選んだ』でも紹介されていましたね。

:ルーフテラスに関しては、単に好きなだけで、仕事の戦略的な背景は何もないんです(笑)。ただ、広いテラスがついていたからこそ、家賃以上の価値を感じて決めたオフィス物件でもあるので、オフィス改装に対する投資もほとんどがテラスにつぎ込まれました。ウッドデッキを張り、本物の芝生を敷き、カウンターも作りました。景色もよくて、少し視界をずらすと神宮の森が見えます。

東京R不動産・吉里:季節がよければハンモックで昼寝をしますし、夏は仕事終わりにカウンターで缶ビール片手にみんなで話をします。バーベキューをすることもあります。

不動産会社であるスピークが、オフィス選びでもっともこだわったテラス。様々な用途があるようだ。

篠田:個人にとっての「気持ちいい」という感じを、仕事の場に思い切り持ち込んでいるのが、大企業で働いている人からするとすごく変わっていると思うところでしょうね。気持ちよく働くためのオフィスづくりという発想で、和室なり縁側なりにこだわるほぼ日も、東京R不動産のみなさんとまったく同じだと思います。