知られざる
恐竜絶滅のメカニズム

 本書に沿って恐竜vsほ乳類の歴史を進化の概観してみましょう。我々(私だけかも知れあせんが)は、魚類→両生類→爬虫類→ほ乳類といった順序で、ほぼ一直線に生命は進化してきたと思っています。しかし、それは真実ではありません。

 恐竜が地球上に誕生したのが、今から約2億3000万年前の「三畳期」。実はほ乳類の遠い祖先である「アデロバシレウス」も、2億2000万年前の三畳期後期に登場しています。その差はわずか1000万年。つまり、恐竜とほ乳類は同時代の地球を生きていたわけです。その後、恐竜は約1億5000万年にわたって、地球の支配者となります。

 特に繁栄を極めたのが、映画のタイトルになっている「ジュラ紀」と「白亜紀」です。余談ですが、恐竜界スーパースターであるティラノサウルスや人気のトリケラトプスは、ジュラ紀ではなく白亜紀の恐竜です。1億年以上もの長きにわたって、ほ乳類はずっと恐竜の脅威にさらされた脇役でした。

 ところが、その時は、突然に訪れます。今から約6550万年前に巨大隕石が、現在のメキシコ・ユカタン半島沖に衝突し、4つの大災害を引き起こします。これが恐竜絶滅の直接の原因となるのです。その一つだけをご紹介しましょう。

「隕石衝突の瞬間、現場の海は一気に蒸発し、気化した岩盤が北米大陸方向に『火玉』となって巻き上がった。数千度という高温の火玉は、地面を這うように現在のカナダまで達し、大量の恐竜が一瞬にして蒸発したと考えられる」(11ページ)

 火星と木星の間に小惑星帯がありますが、地球に衝突した隕石は、この小惑星帯で起きた惑星同士の衝突で生まれた破片の一つだったのです。隕石の直径は約10キロですが、その破壊力はすさまじいものでした。しかも、惑星同士の衝突は1億6000万年前に起きたもので、隕石は実に1億年の時をかけて地球にたどりついたのです。「恐竜絶滅のスイッチは、1億年以上も前に押されていた」わけです。

 我が遠い祖先を圧迫し続けた恐竜が絶滅したおかげで、ほ乳類が一気に地球の支配者の地位を受け継いだかと言えば、そう簡単ではありませんでした。ほ乳類は未曽有の大異変を共に乗り越えて、ライバルとなった巨鳥やワニとの競争に打ち勝って、ポスト恐竜の地位を手に入れることになります。その間、現在のカンガルーのように、小さく生んでおなかの袋で子どもを育てる有袋類と、胎盤を持ち母親のおなかの中で子どもを育てる有胎盤類というほ乳類同士の競争を経て、有胎盤類が全盛となります。そして人類の登場です。ただし、最も古い人類と言われるアウストラロピテクスが約700万年前、現在の人類であるホモサピエンスが誕生したのは、15~20万年前に過ぎません。