3つの報告を順にご紹介していきます。
■報告1:カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco:UCSF)のメアリー•ノートン教授らの研究
この研究は、1万8955人の米国、カナダとヨーロッパの35施設における女性が参加した、大規模な疫学調査です。民間企業であるアリオサ社(Ariosa Diagnostics、昨年12月にスイスの大手製薬ロッシュ社が買収)から、研究資金を受けています。参加者のうち、データ解析が可能な1万5841人が研究の対象となりました。対象にしたのは、高リスクの女性だけなく、平均31歳(18〜48歳)の妊娠可能な年齢の女性全般です。血液サンプルは、平均12.5週(10〜14.3)に収集されました。
結果、ダウン症における新型出生前診断の疑陽性は0.06%、陽性的中率は80.9%、検出感度は100%でした。新型出生前診断で陽性と判定された妊婦38人のうち、確定診断で38人すべての胎児がダウン症(検出感度:100x38/38=100%)と診断されていました。ただし、新型出生前診断で胎児がダウン症と判定された妊婦9人で、胎児の異常は認められませんでした(疑陽性:100x9/1万5841=0.06%)。ですので、陽性と判断された47人のうち実際に染色体異常がある陽性的中率は80.9%(100x38/38+9)でした。
一方、従来の非確定検査である胎児超音波スクリーニング検査や母体血清マーカー検査の疑陽性は5.4%、陽性的中率は3.4%、検出感度は78.9%でした。トリソミー18、トリソミー13においても同様の結果であり、新型出生前診断は、胎児超音波スクリーニング検査や母体血清マーカー検査よりも優れていました。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1407349
企業がスポンサーについた大規模調査である本研究では、新型出生前診断が非常に優れており、高リスク女性に限らず、すべての年齢の女性に新型出生前診断の適応があると結論づけられました。
新型出生前診断の有効性に
疑問を呈する論文も登場
ところが、他の2つの論文の結論はこれと異なり、このスクリーニングは診断として考慮すべきではないと主張しています。
■報告2:フレッド・ハッチンソンがん研究所とワシントン大学からの報告
本研究では、新型出生前診断で疑陽性の判定でしたが健康な赤ちゃんを出産した4例の詳細を分析しました。その結果、2例の胎児では、18番目の染色体が重複しており、18トリソミーとして誤って解釈された結果であることが判明しました。
ヒトの細胞は通常、父親と母親それぞれに由来する遺伝子が2個(2コピー)あります。ところが2コピーではなく、1コピーのみであったり、3コピーもつ人がいることがわかってきました。この遺伝子の個人差を「コピー数多型、Copy number variations:CNV」と呼び、病気につながる場合と、特段の病気につながらない場合があります。
研究者らは、母親のコピー数多型による疑陽性の確率を計算しました。その結果、13番染色体や18番染色体は、21番染色体に比べて、コピー数多型が認められやすいことが判明しました。つまり、正常でも疑陽性になる可能性が高まります。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1408408