Photo by Jun Morikawa
壇上に立ったインド人CEOは確信に満ちた表情で強く語った。
「これは弱い者同士のコンビネーションではない。われわれはそれぞれの構造改革を完遂し、市場でモメンタム(勢い)を持っている」
4月15日、フィンランドの通信インフラ企業、ノキアは、フランスの同業、アルカテル・ルーセントとの買収合意を発表した。買収額は156億ユーロ(約2兆円)で、通信インフラ界では史上最大の買収劇だった。
ノキアといえば、2006年に世界の携帯電話のシェア41%を握った元“携帯の王者”。だが、その後のスマートフォンの台頭に乗り遅れ、13年には携帯部門を米マイクロソフトに売却することになった。
「どの国に行っても、空港でノキアの着信音が鳴っていたのが誇りだった」(ノキア関係者)だけに、その凋落は悲観的に語られた。
だが実は、ノキアはもともと1865年に製紙会社として誕生し、その後、ゴム、家電、パソコンなどと次々と本業を変えてきた企業。携帯の成功と敗北も、長い業態変化の歴史から見れば、“輪廻転生”の一つともいえ、今は通信インフラへの注力を鮮明にしている。
ノキアのラジーブ・スーリCEOは2月、本誌のインタビューに「ノキアには、常に変化し続ける文化がある。過去ではなく、今勝ち続けるのが重要」と述べていた。
その結果、ノキアは携帯部門の売却からわずか1年で経営を黒字化させ、しかも、すぐさま反転攻勢に2兆円をつぎ込んだのだ。
買収の一番のインパクトは、業界勢力図が一気に変わることだ。