人的資本とは、知的労働者であるプロフェッショナルが付加価値を生み出すためのスキルや経験といった要素の集合ですが、ビジネス・プロフェッショナルが企業の生み出す付加価値を分析するのと同様に、自分の人的資本のモニタリングをすべきです。
プロフェッショナルの人的資本は個別の組織に依存せず、持ち運び可能なものです。たとえば、他の企業に転職すると役に立たなくなってしまうようなスキルではなく、組織を選ばずに付加価値を創造できるのが人的資本力なのです。
東京のある金融機関で数千億円の資産を運用する20代のプロフェッショナルの方に「20代前半なら、どんな人を雇いたいですか?」と聞いたときの回答はこうでした。
「企業価値評価のスキルや関係法令の知識、英語力などのコミュニケーション力があるのは当たり前だとして、放っておいてもやってくれる自立心のある人がいいですね。あと欲を言えば、時流を読むセンス。そしてグローバルなインサイト(洞察力)とローカルなインサイトのバランスが良い人。でも実際に採用するときは、チームプレイができるかどうかという人間性を一番重視しています」
また、ある外資系コンサルティング会社の方は「自分が勝負していく核となる能力や個性が、1分間くらい会話しただけで伝わるような凄みや迫力がある人」と答えています。
この回答を聞くと要求が高すぎると思うかもしれませんが、実際に普通の日本人の20代でこういう人はたくさんいます。こういう人に共通するのは、自己責任で何でも楽しそうに好奇心を持って取り組んでいるところです。自分の環境にグチを言ったり、人のせいにしたりするタイプの人ではありません。
また、プロフェッショナルであることに年齢は関係ありません。「私はこの道10年です」と言っても、同じような1年を10回やった人もいますし、1年間でも毎日、新しい発見を咀嚼して、何年分もの経験にしている人もいるのです。この章では、若きプロフェッショナルが人的資本力を考えるうえでのヒントを提示していきます。
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■プロフェッショナルは組織を選ばずに付加価値を創造することができる