5月15日、ソフトバンクと中国のアリババ・グループ(阿里巴巴集団)傘下のアリババ・ドットコムは、月内に合弁会社を立ち上げて、日本で共同事業を本格展開することに合意した。
「海外との取引を志向する日本の中堅・中小企業にとって、ビジネスチャンスの拡大につながるだろう」。アリババ・ドットコムCEOの衛哲(デヴィッド・ウェイ)氏は、やる気満々である。
1999年に設立されたB2B(企業間取引)企業のアリババは、中国で爆発的にサプライヤーの登録者を増やして急成長した。今では、地味な存在ながら約3000万の登録IDを持つ中国最大のB2Bサイトである。
世界には、特定の業界(分野)に的を絞ったB2Bサイトはあるが、40を超える業界を横断的にカバーして100万点ものアイテムを揃えているアリババのようなサイトは存在しない。
しかも、同COOの孫炯(ソン・ジョン)氏は、「アリババのサイトは、毎日、最新の情報がアップロードされている。いずれ自動翻訳で日本語でも問題なく操作できるようにするので、日本に居ながらにして世界を相手に商品が売れる」と胸を張る。
最大の課題は、日本での“認知度アップ”だが、その前に日本向けには「すべてのサプライヤーに対して第3者機関による信用格付けを行なう」ことを決定した。昨年11月から、両社は調査・研究に取り組んできただけに、“現地化”には用意周到である。
ほかにも、日本の中堅・中小企業が海外との直接取引に対して二の足を踏む要因を100項目以上洗い出しており、今秋までに順次クリアして心理的障壁を除く。年内には、ソフトバンクの携帯電話にあるヤフー・ボタンのように、携帯からアリババのトップページ(検索画面)に飛べる機能の搭載も検討されている。
アリババは、世界で最も要求が厳しい日本市場への浸透と同時に、インドへの再進出や、米国本土への展開も視野に入れている。日本は、アリババの世界展開の一里塚である。そう簡単には諦めないだろう。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨仁)