赤石千衣子(あかいし・ちえこ)氏。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長。1955年東京生まれ。非婚のシングルマザーとなり、シングルマザーの当事者団体活動に参加。婚外子差別廃止・夫婦別姓選択制などを求める民法改正活動、反貧困活動に関わる。シングルマザーとして生活保護を利用した経験も持つ。著書は『ひとり親家庭』(2014 年 4 月刊行、岩波新書)など。

 自己を受容し、自己評価を高めることは、誰にとっても容易なことではない。

「それに日本では、『正しい家族』という思い込み、『家族宗教』のようなものが根強いですからね。シングルマザーは、そこから外れているわけですから」(赤石さん)

 赤石さんが、「今のところ、最も効果が上がっているのでは」と考えている支援制度は、「高等職業訓練促進給付金等事業」だ。実施するかどうかは各都道府県に任せられているが、看護師・保育士・介護福祉士などの資格を取得するために2年以上養成機関に通学するひとり親に対し、住民税非課税世帯の場合は1ヵ月あたり最大10万円が最長2年間にわたって給付される。

「なぜ効果が上がりやすいのかというと、やや力のある人たちが対象だからです。預貯金があって養成機関の学費が払えたり、保育園に通う子どもの送り迎えを手伝ってくれる親族が近隣にいたりする人たちでないと無理です。年齢も、40代以上だと厳しいですね」(赤石さん)

 たとえば看護師養成の学校に通う場合は実習がある。実習から帰宅後も実習記録を作成し、提出する必要がある。指定の病院へ実習に行くのに、保育園の送りより前に家を出なければならないこともある。親本人が送りを行うことは不可能なので、親族など誰かの支援が必要だ。もちろん、最終的に国家試験に合格する必要もある。

「体力、気力、そして学力が必要でハードルは高いですが、日本の給付つき職業訓練の中では、最も期間が長いです。でも、資格取得まで頑張っても、就ける仕事は激務だったり、低収入の仕事だったりします。3年間頑張って看護師資格を取った人の中に、就職して1ヶ月で『やめたい』と言う方もいます。決してバラ色ではありませんが、それでも条件の良い方の支援でしょう」(赤石さん)

効果の見えない就労支援
「在宅就労支援」「母子家庭等就業・自立支援センター事業」

 一方で、まったく効果がわからない就労支援もある。

「都道府県や中核市に置かれた、母子家庭等就業・自立支援センター事業はほぼ、母子寡婦福祉協議会という団体に委託されています。しかし、センターの多くが、人が来ないような場所にあったり、独自の求人開拓がされておらずハローワークの求人情報を紹介するだけであったりなど、ハローワークとどう違うのかもわからない状態で、機能不全に陥っています」(赤石さん)

 さらに驚くのは、母子家庭向けの在宅就業支援事業である、と赤石さんは言う。この事業は、「在宅で子どもを見ながら仕事ができるように」という触れ込みで、シングルマザーに研修を行い手当を出し、パソコン入力やWebページ制作やテープ起こしなどをさせるというもので、「あんしん子ども基金」が250億円つぎ込まれた。訓練修了者にはひとり当たり274万円の経費がかけられた。