ホームレスが特技を生かして
仕事できる“ハブチャリ”とは?

現在のホームドアは、生活支援2事業・就労支援3事業・啓発活動3事業を展開している。HUBchari(ハブチャリ)事業は、ホームレス状態から生活保護によって住まいと暮らしを取り戻した人々が、ついで就労するための「リハビリ」の機会ともなっている。ハブチャリ事業に従事した人々の45%は、不利な条件を抱えた人々が多いにもかかわらず、本格的な就労によって生活保護からの脱却を果たしている
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「最初に始めた仕事づくりは、『ハブチャリ(HUBchari)』というものでした。自転車は、おっちゃんたちの足なんです。移動にも、アルミ缶やダンボールを集めて運ぶのにも、自転車は欠かせませんから」(川口さん)

 しかし、一日あたり10~12時間ほどアルミ缶やダンボールを集めて得られる収入は、概ね1000円程度。

「パンクしたときに自転車屋さんで直してもらったら、それだけで500円くらい必要です。おっちゃんたちにとっては大金です。だから、自転車の修理が得意なおっちゃんも多いんです」(川口さん)

 ホームレスならではの特技を仕事に。その思いから、ハブチャリが生まれた。ハブチャリは、全国で一般的になりつつある「シェアサイクル」サービスだ。現在、大阪市内にある18箇所のハブチャリ拠点に行くと、1時間あたり100円から自転車を借りることができる。自転車は、借りた拠点と別の拠点に返却してもよい。月極め利用も可能で、社員の営業の足として利用している企業もある。

 個々の拠点は、自治体・企業などの協賛によって提供された「軒先」、ホテルやオフィスビルなどの、ちょっとしたスペースに設置されている。水色に統一されたスマートなイメージの自転車は、個人あるいは企業からの協賛・寄付で集められたものだ。さまざまな事情があって仕事を求めているホームレスや、ひとまず生活保護を利用してアパートに入居し、毎日続く生存の危機から脱した「おっちゃん」たちが、ハブチャリ事業の中心となっている。「おっちゃん」たちは、自転車の清掃・修理を行い、ロゴマークのシールを貼る。現在は、合計で50台の自転車が用意されている。また、接客に関心と適性のある「おっちゃん」の中には、自転車の貸出・返却業務を通じて「人と関わることの楽しさを学んだ」と言う人も多い。就労相談員との定期的面談・就職支援・就職成功後のフォローアップの機会も用意されている。

「最近は、大阪市から自転車対策事業を任せていただけるようにもなりました」(川口さん)

 放置自転車を点字ブロックにぶつからないように整理整頓し、駐輪禁止のタグを貼ること。駐輪場への案内・誘導を行うこと。市民の身近な足である自転車に関わる仕事は、幅広い。ホームレス状態での生存・生活に必要なために磨かれた自転車関連のスキルは、ほんの少しのきっかけで、社会への「出番」と収入につながる。