小沢一郎・民主党代表の辞任騒動を、今一度振り返ってみたい。なぜ彼は、自民党との大連立に傾いたのだろうか。
自民党は時に、場当たり的で能天気な政策アイデイアを言い出し、財源確保策は官僚に丸投げ、政策を実行してきた。予算収支の裏づけがあって、政策は信憑性を増す。
予算数字の辻褄あわせの苦労を任せることで官僚に取り込まれてしまいもするのだが、そのあうんの呼吸は、「政権与党だけが知る政策実行のための“アヤ”」だと土居丈朗・慶應義塾大学教授は言う。
地方や高齢者にとって、小泉、安倍政権は自分たち弱者を切り捨てる、取り付く島のない冷酷な政権に見えた。その怨念に民主党は耳を傾け、農家戸別補償などの優遇策を掲げることで、参院選で大勝した。1人区の圧勝は、その戦略効果を示すものだろう。
参院選大敗を受けて窮地の福田政権は突然、1兆円もの高齢者の医療負担増を凍結した。
メデイアもいっせいに批判したように、まさしく総選挙目当ての社会保障政策の場当たり的転換である。だが、“アヤ”に応えて、官僚はすかさず補正予算での対応を決めた。場当たり的政策は予算の裏づけによって信憑性を帯び、民主党を追い込む奇策に変わる。
なぜなら、それを場当たり的と批判するなら、自民党は、それならば民主党は場当たり策を凌駕する抜本策を出せと迫るだろうからだ。しかし、悲しいかな、民主党にミスター年金はいるが、ミスター社会保障はいない。