「官製不況」という言葉が、さまざまなメディアで目に付くようになった。景気は循環するものである。政策当局はその落ち込みを最小限に押さえ込むべく奮闘するはずなのだが、「現実は霞が関官僚たちが失策を重ねてその足を引っ張っている」と考える人が増えているということだ。

 とりわけ問題だと指摘されるのが“過剰規制”である。改正貸金業法、金融商品取引法、改正建築基準法など、立て続けの規制強化がビジネスチャンスを奪い、当該業界を不振に陥らせたという批判だ。

 改正建築基準法を例に取ろう。きっかけは、耐震偽装事件である。元一級建築士が建物の構造計算書を偽装し、大きな地震があれば倒壊してしまうかもしれないマンションを次から次に完成させていた。

 民間の指定確認検査機関では見抜けなかった。偽装を防げなかった国土交通省への批判がにわかに高まった。窮地の国交省は建築基準法を改正し、事前審査を格段に厳格化した。

 提出書類は大幅に増え、申請後の設計変更は認められないようになった。わずかな修正でも再提出せねばならず、着工後に設計変更をした場合は認可が下りるまで工事は中断――恐慌をきたした建設業界は、一気に申請に慎重になって手控えた。それでも事務処理の煩雑化で、平均審査期間はそれまでの2倍の60日近くに延びたのだ。

 かくて、住宅着工件数は大幅に減った。景気に悪影響をもたらすのは、当然である。

 偽装がまかり通る状態は、改善しなければならない。改善の方策を規制に求めるとしよう。規制には2種類ある。事前規制と事後規制である。

 小泉政権以後、日本は規制緩和によって産業の活性化を図る方向に大きく舵を切った。企業やユーザーに自由な活動を認める規制緩和は、事後規制と一体であることが必須である。