タブーや常識の向こう側にある、本質を見る
堀江 「組織は大きくしない」ということですが、いま、社員は何人いるんですか?
森川 10人です。そのうち半分がエンジニアで、営業は僕ともうひとりだけで。
堀江 へえ。それじゃあ、相当忙しいでしょう。
森川 そうですね。ちょうど拙著『シンプルに考える』も発売されたタイミングで、取材も入っているので。
堀江 あ、新著! ……すみません。僕、まだ読めていないんですが。どんな内容なんですか?
森川 この本には、僕が実践してきた仕事や経営の原理原則について書きました。空気を読まず、細かいことを気にせず、本質を見極める。これが最大のポイントです。LINE的な考え方って、今までの日本型経営やMBAで学ぶことを否定するような考え方なんですよ。
堀江 へえ。どういうことでしょう?
森川 少し前の日本であれば、決まったことを効率的に早くこなしさえすれば成果が出ていました。でも、今は世の中のスピードが明らかに速くなっている。過去から学んでいては、遅いんです。タブーや常識の向こう側にある、本質を見る。見極めた本質がやるべきことであれば、いち早く着手する。そうしなければ、生き残れません。
堀江 うん、おっしゃるとおりですね。
森川 具体的には「定例会議や計画はやめる」といった話が出てきます。そういう流れが日本にも来ていると感じてはいますが、一方で、大企業ではまだまだずらりと30人並んだ定例会議で意志決定をしているとも聞きますし。
堀江 30人もいたって、なにも決まらないでしょう。
森川 そうですね。検討するための会議を開く。仕様書をつくる時間をとる。どうつくるかの会議を開く。根回しをする。そんなことに3ヵ月も半年もかけていたら、実際にものづくりにかける時間が短くなってしまうでしょう。だから、中途半端なものができあがってしまうんです。
堀江 まさに、日本企業の抱えている問題だ。
森川 そもそも、いろいろな機能を詰め込んだらコストも時間もかかるのは当然です。いかに本質的な価値にフォーカスするか、いかにシンプルなものを出すか、どう意思決定するべきか、どうしたらいいものを出せるか……そんな話が詰め込まれています。
堀江 僕も、ちょうど同じタイミングで本を出したんです。『逆転の仕事論』というタイトルなんですけど、僕が、この人は生き方が面白いなとか、こいつは世の中を変えていくだろうなと感じている8人のイノベーターが登場します。みんなそれぞれ違うことをやっているけれども、おもしろいことをしている人には共通点がある。僕がその共通点や考え方を解説する、という内容です。
森川 なんだか、めずらしい本ですね。
堀江 こういうふうに何人も登場する本ってあんまり売れないんですけど(笑)、発売一週間で3刷までいきました。
森川 おお、すばらしい。新しい働き方を示すという意味では、この2冊は似ているかもしれませんね。ぜひ、あわせて読んでほしいと思います。
<第3回へ続く>