次に、表裏の関係にある現代の政治思想の用語を整理しておきます。

 右派、中道、左派の順に3つの経済学を結びつけて並び替えるとこうなります。右派、左派といった言葉も順に説明していくからね。

① 古典派経済学(18世紀後半~19世紀後半)→ 新古典派経済学(19世紀後半~):自由主義・新自由主義・保守主義(右派)
② ケインズ経済学(19世紀後半~):リベラリズム(中道)
③ マルクス経済学(20世紀前半~):社会民主主義(左派)

自由主義=経済は資本主義、政治は議会制民主主義。財産の私的所有を前提とし、人びとは利潤を求めて行動する。政府はできるだけ小さくして裁量的な政策を少なくし(小さな政府)、規制を可能な限り緩和して民間の活力に委ねる。政府からの自由をめざす考え方(「政府の裁量的政策」とは、政府の考えによって判断し、処置する施策のこと)。

保守主義=自由主義の政治体制と経済体制を保守する考え方。19世紀以降の欧米の保守主義は自由主義と結びついている。

 自由主義・保守主義を右派と呼びます。これは、フランス革命(1789年)後の国民議会で、保守派(王党派)が向かって右手の議席に座り、ジャコバン派(急進的な革命派)が議席の左手に座ったことが語源となっています。つまり、左派は革命派です。語源の右派はフランスの王党派ですが、のちに自由主義体制を保守する勢力が右派と呼ばれるようになります。

リベラリズム(リベラル)=資本主義・議会制民主主義を基盤とするのは自由主義・保守主義と同じですが、市民の自由を確保するため、弱者に対して政府が支援し、積極的に介入します。政府による自由の確保をめざす考え方。財政規模が大きく、官僚機構も大きくなるので、政府は大きくなります(大きな政府)。リベラルは右派と左派のあいだだから、中道とも呼ばれます。

社会民主主義・・・資本主義・議会制民主主義を基盤としますが、政府が国民の福祉を最大にするため、議会で承認されれば国営の事業を増やし、福祉国家をめざす政策を実施します。非常に大きな政府となります。

 ロシア革命後、独裁政権を樹立したソビエト共産党のドイツへの介入に対抗し、議会制民主主義を守る勢力によって誕生しました。これが現在も続くドイツ社会民主党です。資本主義を否定するマルクス主義の共産党と対立しますが、マルクス経済学の影響があります。社会民主主義が左派です。

 次回は、自由主義とリベラリズム、社会民主主義と共産主義との関係などについて説明していきます。