受け取る年を退職金とずらして
先送りすると税金は減る?

 では、受け取る年をずらすとどうなるのか。先の事例で、60歳時に退職一時金を受け取ったのち、運用指図者として65歳までDCを続け、一時金受け取りすると、退職所得控除の年数は次のようになる。

 ③【60歳で受け取る2000万円の退職一時金の控除期間と税額】
 退職所得控除の期間:30年
 ③の税額:40万2500円

 ④【65歳で受け取る500万円の個人型DCの控除期間と税額】
 退職所得控除の期間:0年
 (前年以前14年以内に退職一時金を受け取っていると、加入期間が重複している年数を差し引く…個人型DC加入期間20年-重複期間20年=ゼロ年)
 ④の税額40万2500円

 ③+④の税額合計 80万5000円

 DCを受け取る時期をずらしても、60歳時に退職金受取時に退職所得控除を使い切ってしまっているので、65歳でDCの税金を計算する際の退職所得控除の期間は「ゼロ年」となってしまう。60歳以降、「運用指図者」としてDCを続けたとしても、退職所得控除の期間には算入されないのである。ややこしい税制ルールがいくつもある!

 では、どうすればいいのか。先の個人型DCの受け取りを5年先送りするプランの税額は、60歳時の退職金の税額と合わせると80万5000円なので、②の60歳時に一度に受け取るときの税金よりも少なくてすむ。ただし、すべてのケースにおいて「個人型DCの受け取りを先送りするプラン」が有効とは言えるわけではない。勤続年数やDC加入期間、受け取る金額により、有利、不利が大きく変わってくるからだ。 

 もうひとつの対策として、個人型DCを「年金受け取り」にする方法がある。しかし、この場合も年金受け取りするほうが有利になるかどうかはケースバイケース。DCの積立金が多額だと、1年あたりの雑所得も多くなり、リタイア後の国民健康保険や介護保険の保険料負担が増すデメリットも考えられる。

 税額計算のルールを知り、受け取り時に試算のうえ、有利な選択を自らしなくてはならないのは、普通に暮らしている人にとってハードルが高い。個人型DCは受け取り時にも有利というより、むしろ大きな落とし穴があると言えるだろう。

 筆者はこの原稿を書くにあたり、DCの税制を細かく調べたが、読者のみなさんに最後まで読んでもらえるように税制ルールについてはかなり端折って書いている。それでも「面倒なルールがある」「細かい部分の意味がわからない」という感想を持っていただけることと思う。

 これほど複雑な税制ルールを課しているのだから、国税庁か厚生労働省は個人型DCの加入者に、どういう受け取り方法が有利なのか試算できるサイトを提供すべきだ。税金が安くなる選択ができるシミュレーターを、国税庁が作るわけがない気もするが、あきらめずに言い続けていきたい。