ダイヤモンド・オンラインの連載コラム『山崎元のマルチスコープ』の第381回「金融マンに人生相談するな!」(6月17日付)で、山崎元氏に『週刊東洋経済』6月20日号掲載の拙稿「米国『証券革命』の実情」について取り上げていただいた。
筆者自身は日頃、金融機関の経営者や実務家向けに個別コンサルティングや講演、業界誌向け寄稿などを通じ情報提供を行っている者であり、彼らの顧客である個人投資家の方々に向かって口頭でも文書でも直接メッセージをお伝えすることはほとんどない。そうしたなかで、拙稿の中で説明した「ゴールベース資産管理型営業」という米国証券会社で普及する営業手法について、広範な読者層を抱える山崎氏のコラムで紹介していただいたことに深く感謝しているし、とりわけそのプロセスについても的確に描写いただいたことも非常にありがたく思っている。
一方で、紙幅の都合で拙稿の中で触れなかったデータや説明を省いた部分については誤解されてしまったところもあり、その点については純粋に事実関係を補足したいと考えた。
結論から申し上げると、米国の個人投資家は“ボラれている”とは考えておらず、それも前提として、また金融マンに人生相談をすることや、日本に「ゴールベース資産管理型営業」の適用や応用をすることが、日本の投資家のためにならないとは考えていない。
1988年早稲田大学政治経済学部卒。96年ニューヨーク大学経営大学院卒(ファイナンスMBA)。『週刊金融財政事情』記者、金融財政事情研究会ニューヨーク事務所長等を経て、2005年から野村総研アメリカ勤務。米国で通算20年以上にわたり米銀と米国証券会社の経営戦略を研究。
米国で普及が進む
ゴールベース資産管理型営業とは
まず、『週刊東洋経済』の拙稿自体読んでおられない読者のために、米国の対面証券会社で一般的に普及する「ゴールベース資産管理型営業」について簡単におさらいしておきたい(『山崎元のマルチスコープ』第381回を見ていただいてもよい。また、すでにお読みの方や内容を知っている方などは、3ページ目まで読みとばしていただいてよい)。
米国対面証券会社では、90年代半ば以降に「ゴールベース資産管理」(goals-based wealth management)という営業アプローチを導入し始めた。これは(1)顧客の人生のゴールの特定、(2)ゴールの実現に向けたシナリオの設定、(3)投資の実行(ラップの一任運用による中長期分散投資が基本)、(4)定期・随時のレビューの4つの要素からなる循環プロセスで構成されるものである。